リヴァプールvsマンチェスターシティ

2月9日に行われたプレミアリーグ

リヴァプールvsマンチェスターシティの試合をレビューしていきます。

 

最近数試合なかなか勝てず得点もとれていないリヴァプールと絶好調のシティという対極的なチームの調子だが、互いにハイレベルなプレーを見せた素晴らしい試合でした。

 

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怪我人が多いリヴァプールはスタメンにCBが本職ではないヘンダーソンファビーニョを最終ラインに置き、中盤には若手のジョーンズが起用されました。チアゴとジョーンズが起用されたことからボールを維持して繋ぎながら戦いたいという思惑が伺えます。

 

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一方シティはCFにフォーデンが起用され、中盤に好調のギュンドアンとベルナルドシルバが起用されました。

【ビルドアップとプレス】

シティのビルドアップはいくつかパターンがあり、相手のプレスしてくる形や状況に合わせて変化させていきました。

基本的にリヴァプールはSBへのコースを切りながらWGがCBにプレスをかけ、CFのフィルミーノはロドリをマークする普段からみせている形でボールを奪いに行きます。

①右SBのカンセロが中央に行きアンカーのロドリと2ボランチを組むような立ち位置をとります。そして本来右SBがいる位置にはベルナルドが移動します。これによって一度CBからカンセロを経由してベルナルドに繋ぐことでプレスを回避しました。

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これに対してはチアゴがベルナルドにプレスしにいくことで対処しようとしましたが、ベルナルドが体を上手く使いながら反転して縦へパスしたり、奪われずに繋ぐことでシティが優位に進められました。

②最終ラインを3人にしてパスコースを増やしてビルドアップする形になります。アンカーのロドリが降りてくる時と左SBのジンチェンコが上がらずに最終ラインに加わる時がありました。ロドリが降りた時はカンセロが中央でアンカーのような立ち位置をとり、右SBの位置にベルナルドが移動します。ジンチェンコがそのまま最終ラインに入るときは左SBの位置にギュンドアンが移動することでサイドからボールを進めてWGにまで繋げていました。

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③2人のCBが最終ラインになり、両SBが中央に入ることで2-3-2-3のような形でのビルドアップです。最終ラインが少ないので、リヴァプールのプレスがCBにはかからない時に見られました。前半の途中からリヴァプールは前線からのプレスを回避されていたので、プレスをやめて2ndラインで守備をするようになりました。これによってシティもビルドアップの人数を調整したのだと思います。

 

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長々とシティのビルドアップについて書きました。次はリヴァプールのビルドアップについてです。

リヴァプールはビルドアップに変化はなく、2人のCBが最終ラインとなってSBとアンカーのワイナルドゥムに繋げていきます。そこからチアゴ、ジョーンズ、降りてくるフィルミーノに繋ぎながら2人のWGに渡します。

それに対してシティはフォーデンがワイナルドゥムをマークしながら両WGがSBのコースを切りに行きます。(リヴァプールと同じプレスの仕方)

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前半はリヴァプールのビルドアップはコースを限定されながらも前へ繋げることができていました。しかし後半になるとシティは守備の形を4-4-2へ変更し、フォーデンとベルナルドがCBへワイナルドゥムへのコースを切りながらプレスするようになります。これによってパスコースが前半よりも限定され、苦しめられました。

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2人のプレスを掻い潜ってアンカーのワイナルドゥムに繋げることができても、なかなかその先へ繋げられずにシティボールにされる場面も何度もありました。ここが足元が器用で精度の高いロングボールで左右に展開できるファビーニョのような選手であればまだ良かったですが、ワイナルドゥムには難しいものでした。

シティの2点目3点目は正に守備の形を変えたことでパスコースを限定し、ミスを誘発させたものによるものでした。今回のシティの狙い通りの展開だったと思います。

【中央へ圧縮した守備】

シティの守備で印象的なのが中央へ圧縮した守備でした。相手ボールになった時に前線のプレスでボールが奪えなかった時は後ろの4人が素早く間隔を狭めた守備ブロックを作っていました。2ndラインの撤退も早く、中央のスペースを消せていました。これによってリヴァプールの得意なサイドからの突破や足の速いWGによるカウンターを封じ、シュートまでもっていかせずに守れていました。

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【フォーデン0トップ】

アグエロの長期離脱もあり、CFには誰が起用されるのか興味をもっていましたが、今回起用されたのは若いイングランド人MFでした。フォーデンはこの試合で技術の高さやポジショニングの良さ、インテリジェンスとインテンシティの高さなど多才で素晴らしい選手であることを証明しました。印象的なのは4点目の見事なゴールですが、それ以外でもビルドアップでベルナルドの近くに動いてサポートしたり、前線でプレスしたり攻撃の起点となったりしていました。

スターリングvsアレクサンダー=アーノルド】

試合の1つ決め手になった場面としてスターリングvsアレクサンダー=アーノルドの1vs1でスターリングが優位に進められたからだと思います。

スターリングがPA内にドリブルでカットインまでもっていき、PKの獲得と先制ゴールを演出しました。

 

このようにシティはリヴァプールに対して様々なものを準備し、見事に大きなミスもなく成し遂げたことで宿敵リヴァプールに勝利をもぎ取ることができました。

【感想】

リヴァプールがこのような結果になった要因としてはプレス強度が去年に比べて低かったことや縦パスが少なかったこと、ビルドアップや前線からのプレスで主導権を握れなかったことがあると思います。CBが本職の選手がいないことでファビーニョがCBをやって、アンカーとして出場できなかったのも要因にあると思います。ファビーニョがアンカーのポジションにいれば、ボールを引き出して上手く左右に展開できていたのではないでしょうか。怪我人が多かったことでこうなってしまったのは仕方ないところもありますが、その分ビルドアップをサポートできる方法を増やしておいた方が良かったのではないかと思います。唯一リヴァプールの縦パスがうまく通った場面がPKに繋がり、同点にもっていくことができましたが、あのような場面をもっと作ることができれば結果が変わったかもしれないと思います。

シティのパフォーマンスは全体的に素晴らしく、工夫されたビルドアップはもちろんのこと、相手のプレスによって形を変えて自主的に考えて戦えることに高いインテリジェンスを感じました。ベルナルドの攻守に渡っての走りも素晴らしく、リヴァプールのビルドアップを混乱させました。2ゴールのギュンドアンも好調なだけあって大事な仕事をしましたし、最近のシティの連勝に大きく貢献しています。カンセロの技術の高さも見事でしたし、最高の起用の仕方を作ったグアルディオラ監督の手腕も素晴らしいものでした。

今シーズンのシティは序盤こそ躓いたものの、ここにきてギュンドアンの攻撃面での動きの改善やカンセロの活躍、CBの安定などによって高いパフォーマンスを見せています。このままリーグだけでなく悲願のCL制覇も見えてきているシーズンになるのではないでしょうか。