PL2節 アーセナルvsチェルシー

21-22 プレミアリーグ第2節

アーセナルvsチェルシーについてレビューします。

開幕戦では0-2で数十年ぶりに昇格したチームに敗戦という無惨な結果だったアーセナル

対するチェルシーはホームで圧倒して4-0の快勝という対照的な試合をしたロンドンのチーム同士の対戦になりました。

 

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アーセナルはホワイトが体調不良によりホールディングが代わりに出場し、右SBにはセドリック、1トップにはマルティネッリという布陣になりました。オーバメヤンはベンチに帰ってきてはいるもののストライカーがいない状態でのスタートになりました。

アウェーチームは前節より右サイドがCBにアスピリクエタが降りて代わりにジェームズがWB、STにはハヴァーツ、CFにはルカクが入りました。注目すべきはやはり約150億の移籍金をかけて数年ぶりに復帰したルカクなのはいうまでもないでしょう。彼の圧倒的な身体能力の高さから繰り出されるフィジカルコンタクトの強さや強烈なシュート、落ち着いて周りをサポートする冷静さなど世界最高クラスのFWです。彼にいきなり良いパフォーマンスを出させないように守備を機能させられるのか、そして連敗を避けるためにも負けられない試合になりました。

 

【ハメきれない守備】

アーセナルは相手のビルドアップに対して1トップのマルティネッリが敵CBにプレスし、スミスロウが敵ボランチの1人(ボールサイド側)をマークします。SHは敵CBの近く位置で構えてボールが来た時にプレス、敵WBにはSBが前に出てプレスします。ここで空いてくるのがマークされていない方の敵ボランチです。このポジションの選手に対してはスミスロウがスライドしてプレスし、SHがスミスロウがスライドして空けた敵ボランチへマークしにいくという守備をしていました。おそらくスミスロウに中央へのコースを切らせて、CFとSHで敵CB3人にプレスしてパスコースを追い込んで、敵WBに出したところをSBがプレスすることで奪いにいくという狙いがあったのだと思います。

・アルテタ監督の狙った守備(ペペとサカのポジションが逆でした。すみません。)

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パスコースをサイドに追い込んでいき、

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ボールがサイドに行ったら逆のSHは敵ボランチをマークしにいくことでコースを消していき、最後敵WBへ渡ったところでSBがプレスして奪い去るという狙いでした。

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しかしあっさりマークされていない敵ボランチにパスを通されて前進を許してしまい、一旦リトリートして守備ブロックを作りに行かなくてはいけない状況にもっていかれてしまっていたのは問題でした。

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チェルシーはGKを経由したりボランチレイオフすることでスミスロウがマークしていない方のボランチへパスを通していきます。

更に気になるのはSTマウントへの対応です。マウントに対してポジション的にはボランチかCBが対応すべきだと思います。一応ジャカがマウントに対してマークする場面が何度も見られていますが、マウントがサイドに流れた時にはマークを外してフリーにさせてしまい、サイドで敵WBとルカクをサポートする動きを自由にさせてしまっていました。1失点目はまさにジャカがマークを外した後にティアニーがマウントに対応したことでジェームズがフリーとなってクロスを上げさせてしまったのがルカクのゴールに繋がりました。また、あの場面はコバチッチが反転してルカクに縦パスを通したのも大きく関与していますが、あの時にコバチッチに激しくマークしていれば反転してパスを出させることを防げたでしょう。一応マルティネッリがコバチッチに対応していたようですが、マルティネッリとしてはコバチッチがCBにパスを返すと予想して前掛かりになっていたことで、逆をついてターンさせられてしまいました。これも結局ボランチへマークする選手が曖昧で、スミスロウに2人を見させるという難しい守備をさせていたことによる弊害と言えます。

サイドへ追い込む守備をするにしても中央を通されているのでは意味がないので、SHを最初から1人は敵ボランチにマークさせて、もう1人のSHとCFで敵CBにプレスしてコースを限定させていくとか、スミスロウとCFで敵CBにプレスしてボランチはそのまま1列上がって敵ボランチにマークをついてSHが敵WBへのコースを切るといったような突破口を簡単には作らせないマンマーク気味の守備が必要であったと思います。

【後半での修正】

後半(50分あたり)から守備面で修正が見られました。まず敵ボランチに対してはスミスロウとボランチの1人(基本的にジャカ)が前に出ることでパスの供給源を塞ぎに行っていました。またマウントに対してもCBかロコンガが対応していくようになり、改善が見られました。最前線ではマルティネッリが敵CBだけでなく、敵GKにバックパスした際にはコースを切りながらプレスをかけに行くようになり、前掛かりに取りに行く姿勢が現れていました。

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後半の修正によって守備面では前半よりもうまくハマるようになりましたが、ルカクポストプレーを中心にチェルシーの攻撃を抑え切るには危うさのある守備を続けていました。

特にボランチのジャカが前に出ることで空いてくるスペースへSTのハヴァーツが降りてボールを受けにくるようになっていました。ハヴァーツに釣られてロコンガが動けばマウントが空くのでチェルシーが優位に試合を進める展開は変わりませんでした。

他にも敵WBのジェームズが降りてくることでSBを誘い出し、その空いたスペースにロングボールを送ってルカクが収めるというパターンもあり、多様な手で攻撃してくるチェルシーへの対応に終始苦しめられました。

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また攻撃面でもまだまだ改善の必要性を感じさせるものでした。

【攻撃の連動性とサポート】

チェルシーアーセナルの2チームに決定的な差があるのは攻撃時の連動性です。どのようにして攻撃を完結させるのか、どのように攻撃へ繋げていくのかがチェルシーには存在し、アーセナルにはあやふやにしか存在しませんでした。(前節もそうですし、昨シーズンにもそういったあやふやさはありました)

例えばぺぺがボールを奪って、ドリブルを仕掛けようとしている時に彼の近くにサポートする選手がおらず、そのまま仕掛けてクロスをあげるかカットインでシュートを狙うかを狭られる場面が2度ほどありました。こういうときにスミスロウがぺぺの近くでサポートにいて、更にボランチやSBなどがすぐ後ろにいればぺぺとしては仕掛けるだけでなく、スミスロウを使ってワンツーや一旦ボランチに下げて素早く逆サイドに振ってもらうといった複数の選択肢を作ることができます。その複数の選択肢を用意することで敵の読みを欺き、敵の作られた守備ブロックを崩す一手が撃てるのだと思います。今のアーセナルにはそれがなく、いつも限られた1択か2択の少ない選択肢で勝負し、可能性の高いと言えないプレーを選択してしまっているのがチームに足りないものであると思います。

【3バックという選択】

個人的に前節の試合とこの試合どちらにも思うのが3バックという選択はなかったのか?ということです。

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なぜ3バックなのかと言えば、新加入ホワイトの存在だけでなく、ビルドアップの安定性や守備時の枚数の多さ、ティアニーの積極的な攻撃参加を増やすためです。ビルドアップでは直接的原因で失点したものはありませんが、相手のプレスに対して選択肢を狭められてロングボールを蹴ってしまう場面やスミスロウが下がってサポートする場面が目立っています。前線に空中戦に強い選手は居ませんし、裏のスペースを狙うにしても敵CBが警戒している状態でのボールは先にスタートしている守備側に優位なのでなかなか有効打にはなりにくいです。そしてスミスロウが下がってサポートする現象についてはサポートそのものは良いですが、結果的にスミスロウが下がってしまった分、前進できた時にSHが孤立しやすく(【攻撃の連動性】でぺぺを例に出した状況のように)サポート役であるはずの彼との距離が離れてしまっています。そのためにも3バックにしてCB3人からのパスコースをそれぞれ増やすことで、敵のプレスにも安定してパスを回して敵を自陣深くまで誘いこんで裏を狙ったり、押し込んだ状況では左右に揺さぶるパスを通せたりとメリットが多いと思います。

守備面でも4バックであればCBの2人はバランスやDFラインを考慮して迂闊に前に出てプレスしにいくいのはリスクを伴いますが、3バックであれば1人が前に出てプレスしにいっても残りの2人でカバーができるのでリスクを減らせます。マリの対人の不安定さや空中戦の不安も人数を増やすことで解消できますし、連続で2失点している状況を踏まえれば守備にテコ入れが必要なのは明白でしょう。ついでにチェルシー戦ではスミスロウを2人の敵ボランチを見させてスライドする動きを何度もさせたりすることで体力を消耗していたので攻撃面で体力を使ってもらうためにも2人のSTを用意してきっちり敵ボランチ2人をハメこめるようにできるのも3-4-2-1のメリットです。

そして欠かせない存在としてアーセナルを支えているティアニーですが、彼の特徴といえば攻撃参加時のクロス精度やミドルシュートです。その彼が攻守に渡って激しい上下運動を繰り返し、特に守備面でかなり体力を消耗させられていることを考えると、最初から高い位置に上がることもできるWBの方が彼の特徴が活かせます。

このように3バックをするべきメリットが今の状況を考えても多いと思います。アーセナルというチームの現状を考えるとアルテタ監督は試合の采配だけでなく様々な部分で手をかけなくてはいけないと思います。またそれをサポートしてくれる人も足りていなかったり、アルテタ監督と良い意味で意見を出し合って考えを練り直したり決断を下せる人が必要であると思います。昨シーズンのチェルシー戦でスミスロウを起用して復調したように、このチェルシー戦を踏まえてどうすべきか考えて次のシティ戦に臨んでもらいたいと思います。