プレミアリーグ26節 アーセナルvsニューカッスル・ユナイテッド
今回はプレミアリーグ26節 アーセナルvsニューカッスル・ユナイテッドの試合の感想を書いていく。
アーセナルはリーグ戦3試合連続で引き分けという状況で勝ちがほしい試合。前節のバーンリー戦は何度か決定機は作れたものの逆に失点してもおかしくないようなピンチも多く、結局スコアレスドローで後味の悪い試合だった。
前節から1週間以上の期間があったので選手のコンディションは良かったと思う。
アーセナルはアルテタ監督就任後初めてセバージョスが先発し、FWも試合に出続けていたラカゼットから変わってエンケティアが起用された。
【アーセナルの攻撃】
ビルドアップではベジェリン、ムスタフィ、ダビド・ルイスの3バックまたはムスタフィ、ダビド・ルイスの2バックが最終ラインを担う。その1列前にセバージョスとジャカが位置取る形でボールを運んでいく。セバージョスとジャカからはライン間で受けに来るエジルを使ったり、左サイドに開いたサカや右サイドのベジェリンorぺぺを使って攻め込む。
押し込んだ状況ではサカとオーバメヤンが左サイドで幅を使いながら、右サイドはベジェリンとぺぺが幅を使う。エンケティアは中央で敵CBを背負いながらライン間に顔を出す。
【アーセナルの守備】
敵のビルドアップ時は敵CBに対してエンケティアとエジルがプレスして牽制しにいく。
【ニューカッスルの攻撃】
ボールを奪ったらサイドからSBとSHが素早くスピードを生かしたドリブルで突破しにいく。ロングボールでジョエリントンを使いながらSHと連携してシュートまでもっていく、
【ニューカッスルの守備】
5バックと4人の中盤で5-4のブロックを作って守備をする。ラインも低くしてCFジョエリントンも敵CHへ牽制しに行ったりする。あまり前から奪うような意識はなく、アルミロンが単独で敵ビルドアップ時にプレスしにくることがあった。
【試合の展開】
ニューカッスルの5-4のブロックでずるずる引きながらの守備に対してアーセナルがボールを保持する時間が多くなる。
アーセナルはサイドからドリブルや幅を使って崩しに行ったり、セバージョスかジャカを経由してサイドチェンジして敵ブロックを揺さぶりに行くがなかなか決定機までもっていけない。
逆に何度かボールを失ってからニューカッスルにカウンターを許す場面もあり、例えば前半4分に右サイドに流れたジョエリントンへのロングボールから突破されてクロスに左サイド大外から上がってきたラザロに決定機になるシュートを許す場面があった。(右側を見ながらの撤退守備でCBと左SBサカにはラザロが見えていなかった)他にもサント=マキシマンにドリブルでベジェリンが振り切られて危ない場面も何度かあった。
結局アーセナルはニューカッスルの5-4のブロックを崩しきれないまま前半終了する。
後半からもアーセナルがボールを保持しながらニューカッスルの5-4のブロックを崩しに行く構図は変わらないまま。
しかし前半に比べて押し込んだ状態でのジャカとセバージョスからサイドのオーバメヤンやベジェリンを狙ったダイレクトパスが増え、PA内で素早くシュートまで持っていけるようになる。
すると54分にぺぺがPA外からカットインからの左足クロス(高さのある山なりの軌道)にオーバメヤンがヘディングで合わせてゴールが生まれる。
更に57分には左サイド大外からサカがドリブルで2人抜いて低い弾道のクロスを上げる。これをぺぺがダイレクトで合わせて2点目が決まる。
立て続けにゴールが入ったことでニューカッスルもボールを奪いにCHがプレスしにきたりして5-4のブロックを崩して前から奪いにくるようになる。何度かニューカッスルの攻撃でアーセナルの守備が崩されかける場面はあるものの結局無失点で試合を終える。
【総評】
90分と95分にもアーセナルはゴールを決めて結果は4-0というアルテタ監督就任後最多得点での試合というのもあって満足できる結果だったと思う。更にぺぺ、エジル、ラカゼットという数字での結果が求められていた選手たちがゴールできたのも嬉しい。
ビルドアップ時にパスがジャカとエジルに集中しやすかった以前までの試合に比べて、セバージョスのCH起用はパスの選択肢を増やすだけでなく、セバージョスを起点にして攻撃ができるのは大きな影響を与えたと思う。またセバージョスがいることでサイドチェンジもしやすくなったし、プレス耐性もあがったと思う。しかし少し守備面では不安を感じる場面があり、相手との距離の取り方やブロック守備時のポジショニングなどは今後の課題になりそうだ。
今までCHで起用された選手としてはトレイラとゲンドゥージがいるが今後CHを誰が担うかは楽しみである。個人的にはニューカッスルのような引いて守ってくる相手に対しては攻撃の起点になれることやサイドチェンジで揺さぶれることを考えるとセバージョスが良いと思う。リーグ上位のチームやELの大事な試合などは相手に攻め込まれる時間も多くなるだろうし、フィジカルコンタクトも増えそうなのでトレイラが優先されそう?
前半にニューカッスルの攻撃が失敗してレノがボールをキャッチした後に、素早くスタートしてニューカッスルのSH、SBが戻りきれていない間に素早く攻めこみにいく場面が何度か見られた。相手のブロックが出来上がる前に素早く攻めこむこと自体は良いのだが、逆にボールを奪い返されてカウンターをくらう場面があり、かなりアップテンポな展開になっていた。これによってジャカ、セバージョス、ムスタフィ、ダビド・ルイスあたりは短い時間の中でかなり走らされていたのではないだろうか。
そのこともあってなのか終盤はかなり疲労が見え、ニューカッスルの攻撃にブロックが崩されかける場面があった。終盤で疲労などで危うくなる場面はこの試合に限らず見られてるので、今後も課題として残るだろう。
最後まで読んでくれた方がいたら、ありがとうございます。
【感想】レアルマドリー vsアトレティコマドリー
ラ・リーガ22節 2月2日
普段プレミアリーグばかりでリーガを見ることはほとんどないのだが、気になっていた2チームの試合であったことや、見る時間があったこともあり、フルタイムで試合を見た。
レアルマドリーは今季リーグ戦わずか1敗と好成績を残している。特に失点が少なく、なんとリーグ1位の失点の少なさでリーグの順位も首位に立っている。しかしベイルと今季多額の移籍金で加入したアザールの個で打開できる選手たちが怪我で離脱中というのは気がかりだ。
一方アトレティコマドリーは持ち味の強固な守備こそ健在であるが、ジエゴコスタの怪我やジョアンフェリックスの不調などによりチームの調子自体は良くない。
シュート数16-4
枠内シュート数5-1
ボール支配率66%-34%
レアルは4-5-1で中盤の数を増やしたフォーメーションで挑み、アトレティコは普段通りの4-4-2の形である。
【レアルの攻撃】
レアルの攻撃はカルバハルとヴァラン、ラモスの3人が3CBの形でディフェンスラインを保つ。右サイドはバルベルデがハーフスペースを使いながらモドリッチが外側からサポートする。左サイドはイスコがハーフスペースを使いながらSBのメンディーが外側をオーバーラップしてクロスを狙う。クロースが左サイドの攻撃に参加したり、隙を伺ってカゼミーロが右サイドの攻撃に参加するときもあった。
【レアルの守備】
守備ではアトレティコのビルドアップに対してベンゼマとクロースが敵CBにプレスをかける。バルベルデ、モドリッチ、カゼミーロも奪われたら素早くプレスしてボールを回収しにいく。
【アトレティコの攻撃】
基本的にボールを奪ったらビトーロにパスをしてビトーロ、モラタ、コレアの3人でシュートまで素早くもっていく。
【アトレティコの守備】
4-4のブロックを作ってラインをコンパクトにしながら守る。ビトーロが敵CBにプレスをする時もあったが基本はカゼミーロの近くで中央へのパスコースを牽制する。
【試合の展開】
レアルがボールを持つ時間が多いものの、アトレティコの強固な守備を崩しきれず、シュートまでもっていけない。レアルの中盤はどの選手もボールの扱いがうまい選手ではあるが、お互いの距離が近すぎることや、前線での人数が少ないのも影響しているだろう。アトレティコは4-4のブロックを敷いてブロック外でのボール保持は許すものの、ブロック内への侵入には素早くプレスして奪いにいく。レアルの攻撃がシュートまでもって行けずにアトレティコに奪われることで、ビトーロに預けてからのモラタとコレアでシュートまで素早くもっていくアトレティコのプラン自体はうまくいっていた。
後半に入ると同時にレアルは2人の選手交代をした。クロースとイスコを下げてヴィニシウスとバスケスを投入し、フォーメーションも4-3-3に変更する。4バックはそのままで中盤はカゼミーロがアンカーで右モドリッチ左バルベルデの逆三角形になり、前線は右バスケス左ヴィニシウス中央ベンゼマになる。この変更によって選手同士の距離が開くようになり、斜めのパスを出しやすくなった。特に左サイドはヴィニシウスとメンディーが外側と内側をうまく使いながらの突破がしやすくなった。ベンゼマも前半よりもボールをもらいにサポートする動きが増え、サイドに流れて数的優位を作ったり、ビルドアップに参加して中盤へのサポートもするようになった。(普段からベンゼマは動き回って味方のサポートができる選手なのでシステム変更はベンゼマの動くスペースを作ることにも繋がっている)中盤のバルベルデも前半よりも中央でプレーが出来るようになったことで、クロスのこぼれ球から強烈なミドルシュートを放てたり、守備でもフィルターとしてボールを奪い返しやすくなった。これはモドリッチも同様に見られた。
48分にアトレティコもモラタを下げてレマルを投入し、コレアをCFにしてレマルを右サイドにして前線から守備をするようになる。(モラタを下げた理由は前線からの守備を疎かにしていたことや前半の攻撃時にゴール前でのポジション取りで役割を果たせなかったから?)
すると56分に左サイド外側でボールを持ったヴィニシウスから内側を飛び出してきたメンディーにパスが渡り、メンディーの低い弾道のクロスからベンゼマが合わせてゴールが決まる。まさにシステムを4-3-3に変えたことがゴールに繋がったプレーだ。先制点を決めた後も右サイドを中心に攻撃をする時間が続くレアル。守備面でもアトレティコのビルドアップにはベンゼマとモドリッチがプレスすることで自由に攻撃をさせない。前線のプレスを突破されてもバルベルデ、モドリッチ、カゼミーロが素早くプレスをするし、カゼミーロが空けたスペースにはラモスが1列上がることでカバーする。結局アトレティコはカラスコとカメージョを投入して前線を入れ替えるが目立ったチャンスは作れずに試合終了した。
【総評】
前半はレアルの中盤が多いことでパス自体は繋がるもののシュートまでなかなかもっていけなかったが、後半開始に思い切った交代をすることでシステムも変更し、見事にそれが成功した。前半だけの内容で交代に踏み切るのは非常に勇気のいる決断であるし、クロースとイスコというどちらも大きな実績をもったタレントを下げるというのはジダン監督であるからこそできるものであると思う。
細かいプレーを見ているとどの選手も質が高く、総合的な能力の高さに驚かされた。例えばモドリッチはパスの質の高さ、ドリブルで敵の守備ブロックへの侵入、ボールを奪われた後は素早く体をぶつけて奪い返しにいく動き、敵のビルドアップに対してベンゼマと共にプレスするなど様々なプレーを見せていた。これ程のプレーをどれも高い質でこなせる選手は世界中でほとんどいないと思う。
レアルの良いところばかり紹介していたが、見ている中で課題も見えた。前線からのプレスは前半ベンゼマとクロース、後半ベンゼマとモドリッチで行っていたが、レアルとアトレティコの配置をそれぞれ考えるとクロースやモドリッチがプレスをしにいくのは本来のポジションからの距離や運動量を考えると非効率であると思う。効率的にプレスをするならば前半ならベンゼマとイスコorバルベルデ、後半ならベンゼマとヴィニシウスorバスケスが行った方が本来のポジションから近いので良いだろう。おそらくこういった前線からの守備に関してジダン監督から細かい指示が出ていないのではないだろうかと思う。
アトレティコについても強固な4-4の守備は素晴らしかったが、攻撃の部分で課題が見えた。ボールを奪ったらビトーロにボールを渡してモラタとコレアでゴールを奪いに行く狙い自体は良かったと思う。しかしモラタを下げた後のレマル投入の意図やモラタの高さを使ってボールを奪った後のターゲットマンとしての役割をさせたり、メンディーがオーバラップした後の空いたスペースを使うような動きがあった方が良かったのではないかと思った。
普段はプレミアリーグばかり見ている私だが、今回の試合は見ていて面白かったので、今後もCLやリーグ戦で面白そうな試合があれば見ていきたい。