CL決勝T1回戦パリサンジェルマンvsドルトムント2ndレグ

CL決勝トーナメント1回戦

パリサンジェルマンvsドルトムント2ndレグのレビューを書いていく。

 

1stレグではホームで期待の新星ハーランドの2ゴールによって2-1で勝利したドルトムント。ホームでの強さを発揮してパリの強力な攻撃陣を抑えながら、トランディションの早さやサンチョ、ハキミ、ゲレイロ、ハーランド、レイナといったスピードある若手選手の特徴を発揮させながら先勝した。アウェイでは戦績が良くないというデータがあるものの1stレグの内容では2ndレグへの期待を持てる試合だった。

一方パリサンジェルマンは強力な攻撃陣がいながらも1stレグは敗戦し、2ndレグのホームでは勝利が絶対条件と追い込まれた。優勝も期待されながら3年連続ベスト16止まりという嫌なデータもあり、不穏な空気が漂っている。1stレグでの内容は悪いもので、中心選手のネイマールは1ゴール決めたものの攻撃時に個人技での特徴を生かせず、逆に守備の甘さやコンディションの悪さが目立ってしまった。悪かったのはネイマールだけでなく、ムバッペもアシストした場面以外はスピードを生かすことがなかなかできず、ディマリア含めてパリの強力な攻撃陣はドルトムントの5バックに苦戦させられた。

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そういった状況の中でパリサンジェルマンはどのようにしてドルトムントに勝利したのか説明していく。

 

【5-4ブロックを崩す算段】

ドルトムントは1stレグで5-4-1のブロックを作ってパリの攻撃を苦戦させた(ドルトムントの守備については1stレグのレビュー記事に記載)。ゴール前にいる守備の人数が多いので、なかなか突破するのが難しい。その上、中盤も4人いるのでゴール前のスペースがほとんど無く、個人技で無理やり打開しようものなら、あっという間に数人に囲まれて奪われてしまう。そんな5-4のブロックを突破するための崩しの形をパリは用意し、うまく発揮したことで勝利に繋がった。

【ライン間への侵入】

5-4のブロックを崩すために、5と4のライン間に選手を配置するようにした。このライン間にいる選手を使って相手のDFを崩していく。

まず2トップは敵3バックの両サイドにいるCBの位置に配置し、SHはライン間に配置する。そしてCBやCHからライン間にいるSHへのパスを狙わせる。こうするとボールが渡ったSHに対して敵CBが奪いにくるだろう。その敵CBが動いたことで出来たスペースに2トップを走り込ませ、素早くSHからパスが通れば決定機が作れる。SHに対して敵CBが奪いに来ないのであれば、そのままSHがドリブルで持ち込んでシュートを狙っても良いだろう。

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この形で24分カバーニのシュートした場面や69分ムバッペのシュートのような決定機を作った。

ここで大事になってくるのがSHのライン間での技術と2トップの裏を狙う動きだ。

SH

・敵CHにマークされないように背後でポジション取りすること

・ボールを受けて素早くターンしてトップへパスを繋げられる技術

ミドルシュート

トップ

・積極的にDFラインの裏を狙う動き

・CBの背後でのポジション取り

これらを考慮するとSHにネイマールとディマリアが起用されたこと、トップにサラビアとカバーニが起用されたのもよく分かる。

 

【SBを使った崩し】

先程紹介した形と同じような配置でSBのオーバーラップを使った崩しも見られた。

ライン間までオーバーラップしたSBにパスを出すことで敵の視野をサイドにもっていかせ、そこから敵CBとゴールの間を狙ったアーリークロスを出す。敵は視野を動かしながらクロスへ対処しなければいけないので難易度が高い。また、SBからクロスを出すのが難しい状況の時はSHへパスを通して先程紹介した形にもっていくこともできるし、トップを狙って斜めにパスを出すこともできる。

この形で2点目のサラビアのクロスからベルナトが決めたゴールは生まれた。

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【サイドに追い込む守備】

パリサンジェルマンの守備面でも1stレグとは違う形が見られた。ドルトムントのビルドアップ時に2トップが敵CBに対してプレスをかけていく。例えば中央のCBがボールを保持している時なら1人は中央のCBにプレスし、もう1人は左右どちらかのCBをマークすることでパスコースを限定させる。マークされていないサイドのCBにパスが渡ったら、今度はスライドするようにトップはボールサイドのCBにプレスをかける。この時に敵CHにはCH、敵WBにはSH、敵STにはSBがそれぞれマークすることで近くのパスコースを消す。こうすることでドルトムントのビルドアップを牽制し、高い位置でボールが奪えるようにしていた。

ちなみにこのサイドへ追い込む守備は敵のサイドCBに精度の高いロングパスを出せるような選手がいる場合、逆サイドへロングパスを出されてしまい、守備網を突破されてしまうので注意すべきである。あとはロングパスで前線に出すのも守備網の突破に繋がるが、長身のハーランドにターゲットマンとして仕事させないためにキンペンベとマルキーニョスが徹底的に体を当てながら競り合っていたので、ロングパスでハーランドを使って打開されることもなかった。

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これらの紹介した攻守の形を用意し、試合を優位に進めたパリ。だが、これだけでなく選手の士気も高く、守備意識も高かった。1stレグでは守備意識の低さからドルトムントに試合を優位に進められたが、この試合ではディマリアやネイマールもボールを奪われたら守備へ素早く切替えていた。撤退守備時には4-4-2のブロックを作り、後半ネイマールが戻り切れていない時はカバーニがSHとしてブロックを作っていたのもチーム全体で勝利を目指している意識が出ていて良かった。後半途中からはムバッペが交代投入されたが、先発ではなかったのは守備のタスクの部分でカバーニの方が良いと判断したからだと思う。前半に2点取ったことで後半からはドルトムントが攻撃的にくるようになり、前がかりになってきたので、タイミングを計って圧倒的スピードをもったムバッペを投入することにしたのだろう。この辺の采配面でもトゥヘル監督の判断力の良さが生きたのだと思う。

一方ドルトムントは1stレグ同様の形で5-4のブロックを作って守備的に戦ったが、前半に2点奪われ、決定機も作れなかった。後半は前がかりになって攻め立てたが、パリの4-4-2のブロックに阻まれてしまった。その中で気になったのは攻撃の停滞だ。WBの裏を狙った動きやSTの動き出しもなく、足元でボールを受けようとすることが多かったことが要因の一つにあるだろう。5-4のブロックを崩しにこられた時も対応策があれば良かったが、システムを変えたりすることもなく、継続させてしまったのも要因だと思う。

 

以上で終わります。