CL決勝T1回戦 チェルシーvsバイエルンミュンヘン1stレグ

CL決勝トーナメント1回戦

チェルシーvsバイエルンミュンヘン1stレグの試合レビューを書いていきます。

 

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シュート数9-16

枠内シュート数3-6

ボール支配率36%-64%

 

【CHの攻防】

この試合の勝敗の鍵になったのは如何にチェルシーの中盤とCBの間にスペースを作れるかだ。このCBの前にできたスペースをバイエルンは使ってCBを釣り出しながら崩していく狙いがあった。ではこの狙いを通すためにバイエルンはどのようなプレーをしていたか説明していく。

①ビルドアップ

2人のCBとSBパバールとCHキミッヒで最終ラインを作り、その1列前にチアゴが中央で位置取ってパスを回して前進していく。(左SBのデイビスは大外高い位置を取っている)

チェルシーはそれに対して3人がプレスにいく。しかし3人でそのままプレスしても5vs3で数的不利なのでボールを奪いきれない。序盤はバイエルンにそのまま前進を許してしまい決定機を作らせてしまっていた。

そこでチェルシーはCHの1人であるジョルジーニョが前に出てきてチアゴをマークするようになる。すると今度はジョルジーニョの上がって空いたスペースに出てきたミュラーを使ってプレスを突破されてしまう。この時にCBボアテングから1度キミッヒにパスしてからキミッヒが素早くSBパバールにパスすることで相手を誘い出す。これによってミュラーの周りにスペースが出来上がる。

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結局ジョルジーニョはチアゴミュラーの間を取るような位置で両方を見ながらプレーするようになる。(途中からはチアゴとキミッヒの位置を入れ替えて惑わしてくる場面もみられた)前半はジョルジーニョミュラーとチアゴを見ながら耐え凌ぐ場面が多い中で両者得点を許さずに前半終了した。

②GKを使った攻撃

先程説明した通り前半はジョルジーニョバイエルンのCHが誘い出しながらスペースに出てきたミュラーを使って攻撃をしていたバイエルン。後半からは更にCB前のスペースを広げるためにGKを使って攻撃をしていく。

まずは前半に比べてDFラインを下げて、低い位置でビルドアップを開始するようになる。ラインが下がることでチェルシーのプレスも前掛かりになっていく。ここで1度GKに下げてGKからCB前のスペース(左より)にいるレヴァンドフスキを狙ってロングボールを出す。レヴァンドフスキがそのままポストプレーができればミュラーへ渡るので一気に決定機を作れる。例え空中戦で勝てなくてもこぼれ球をニャブリ、ミュラーが拾えればスピードと個人技で十分決定機を作れるだろう。

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あえて自陣の低い位置でボールを持つことで奪いにきた相手の裏のスペースを使った見事な攻撃であった。これができるのも高いキックの技術をもったGKがいることと高さのあるFWがいることによって成せる攻撃だろう。

 

 

バイエルンの2点目のゴールは狙い通りと言えるようなGKノイアーのロングボールからレヴァンドフスキ→ニャブリと繋いでの攻撃であった。1点目もCB前のスペースが関係していて、チアゴがうまくコバチッチを誘ってから出したニャブリへの浮き球のパスにアスピリクエタが足を取られて滑ってしまい、そのままニャブリにドリブルを許してしまったところからゴールが生まれた。チアゴの技術の高さやアスピリクエタの滑ってしまったことによるものもあるが、うまくチェルシーのCHを引き寄せたことで生まれたスペースを使ったプレーでもある。

 

バイエルンの左サイド】

左サイドではデイビスが高い位置を取ることで内側に入ったニャブリと連携で崩せる形を作っている。対してチェルシーも右サイド(バイエルン側の左サイド)はジェームズとアスピリクエタが対応していたが、ミュラーがサポートに来たりデイビスとニャブリの圧倒的なスピードと個人技には終始苦戦していた。3点目のゴールは正に左サイドの強力な個人技で生まれたゴールと言える。

 

【あとがき】

この試合を見ていてミュラーの重要性と高い技術を改めて感じた。ミュラーバイエルンにとって攻撃時のリンクマンとしての役割やゴール前でフィニッシャーや囮りとしての役割を持ち、リーグでは5ゴール14アシストという素晴らしい成績を残している。やはりミュラーの存在はバイエルンにとって欠かせないことがわかる。他にもキミッヒとチアゴがうまく入れ替わりながらビルドアップすることで相手に対応しづらい状況を作ったり、相手の出方を見ながらビルドアップの形を変えて戦えるインテリジェンスの高さも見せていた。アラバの精度の高いキックも大きな武器になっており、対角線のロングボールでデイビスへ一気に展開したり、ミュラーへの斜めのパスを通すなど長短のパスを使い分けながら攻撃を組み立てていた。ニャブリとコマンのスピードあるドリブラーも最初は内側に位置取らせながら外側へ向かって斜めに走らせることで相手DFを撹乱させ、ミュラーレヴァンドフスキとの連携で決定機を演出した。2点目が入ってからはデイビスには本来のSBの位置でプレーさせてリスク管理をしながらもマイボールになった時は横幅を使いながら攻めることで相手をサイドに引っ張り出してクロスに持っていくという手数を減らしながらも攻めの姿勢を見せる戦い方をしていたのも見事である。

 

チェルシーはホームでありながらバイエルンに3失点という難しい試合をさせられた。得点も取れず2ndレグにはジョルジーニョの出場停止もあるので厳しいことは間違いない。今回の試合でチェルシーの課題として見えたのはジルーの使い方と前からのプレスの曖昧さである。

エイブラハムの怪我もありスタメンで出場したジルーであるが、今回は大きな見せ場は作れなかった。ジルー自体のパフォーマンスが良くないというよりもジルーをどう使っていくかチームとして作られていなかったように見えた。例えばジルーはポストプレーが得意な選手なので、ジルーをパバールの位置でロングボールを競らせて起点にするとか、低い位置からでもジルーを狙ったボールを出しても良かったと思う。前からのプレスでもジルー、バークリー、マウントの3人が誰に対してプレスをするのか曖昧で、結局バイエルン側にうまく利用されてしまう形になってしまった。あえて数的不利の時はプレスに行かず中央へのコースを切りながら引いて守る戦法でも良かったかもしれない。

攻撃面ではマウントがハーフスペースを抜け出して裏を取る場面があったが、デイビスのスピードある守備対応で決定機を生かし入れなかった。左サイドではアロンソコバチッチがうまく内側と外側を使い分けながら突破する場面があったように左サイドの方がバイエルンの守備を崩しやすかったかもしれない。マウントを左サイド(途中でマウントとバークリーの位置が入れ替わっていた時はあったが一時的なものだった)にしても良かったと思う。ジェームズは精度の高いクロスをもっている選手だが今回はあまり上がることができず守備に追われる時間が長かった。デイビスvsジェームズの場面ではデイビスに軍配があったのもありジェームズにとっては苦しい試合だった。3バックを使ったことに関してはレヴァンドフスキミュラーにゴール前で自由にさせないという面では良いのだが、中盤と前線との連携が取れておらず、前がかりにいくのか引いて守るのかが曖昧であったことが良くなかった。

 

こんな感じで色々書いてきましたが、2ndレグに少しでも修正して巻き返しを狙えたら良いですね。