ReLIVE CL準々決勝トッテナムvsマンチェスターシティ1stレグ
お久しぶりです。この間DAZNのReLIVEで配信された18-19 CL準々決勝トッテナムホットスパーvsマンチェスターシティの試合について書いていきます。
18-19シーズンのマンチェスターシティはリーグ優勝とカップ戦優勝の2冠を達成したものの悲願のCL優勝は成し遂げられなかったという全体としてみれば良かったものの少しほろ苦さも残るシーズンでした。CL優勝チームとなったリヴァプールに対してもリーグ戦で唯一勝ったシティ。実力はCL優勝チーム相応なのは疑いようがないと言って良いでしょう。
そんなシティをCLで苦しめ、ベスト8で敗退に追いやったのが奇しくもリーグで何度も対戦しているトッテナムでした。近年大きく炉進し、CLに出場することも物珍しくなくなってビッグチームの仲間入りをしたと言っていいトッテナム。そのトッテナムがいかにしてシティに勝利したか個人的な考えを書いていきます。
まずはスターティングメンバーから、シティは本職左SBの選手であったジンチェンコは怪我で離脱中、メンディーは長期離脱から復帰したばかりでコンディションが良くないため外され、起用されたのがデルフです。元々は中盤の選手でしたが、グアルディオラ監督の元で左SBにコンバートされてリーグ戦前半では素晴らしいプレーを見せたりもしていましたが、リーグ戦後半には調子を落として監督からの信頼も揺らいでいる中での起用でした。
他のDFはラポルテ、コンパニー、ウォーカーという盤石なメンバーが起用されました。中盤はボランチにフェルナンジーニョとギュンドアン、OMFにD.シルバ。FWは右にマフレズ、左にスターリング、中央アグエロという左SBに不安があるものの現状で可能なベストメンバーで挑みました。ちなみにチームの中心選手であるデブライネは怪我明けでコンディションが整っておらず、ベンチスタートとなっています。
対するトッテナムは大きな怪我人での穴もなく、ケインやソンフンミン、エリクセンも出場し、ベストメンバーで挑めていました。
1stレグはトッテナムのホームで行われ、優勝を目指すシティとしてはアウェーゴールを狙いたいところでした。
【序盤は優位に戦っていたシティ】
試合開始すぐにシティはボールを支配し、試合を優位に進めていきます。トッテナムの前からのプレスにもフェルナンジーニョとギュンドアンがサポートに来ることでパスコースを作ってプレスを掻い潜っていきます。そしてD.シルバとタイミングよく下がってボールを受けに来るアグエロが相手ボランチをおびき寄せながらサイドのスターリングやマフレズに渡してトッテナムの守備を崩していきます。マフレズとスターリングはどちらも得意のドリブルでDFを翻弄していきます。そんな最中の前半10分にスターリングのドリブルでペナルティエリアに侵入してうったシュートが相手DFのローズの手に当たってPKになります。PKキッカーはアグエロ、このままシティが先制点をアウェーであげてスコアでも有利に立って一方的な展開になるかと思いました。しかしアグエロのPKはロリスのセーブによって止められてしまいました。シティにとっては最大のチャンスであり、このPK失敗がシティの運命を左右させたと思います。
この試合で1番トッテナムの勝利に貢献した選手はエリクセンでしょう。ゴールを決めたソンフンミンも見事でしたが、エリクセンの働きは90分通して素晴らしいものでした。
①急所をつくパス
ボールをもったエリクセンは素早く相手DFの裏を狙ったパスorケインを狙ったパスを出していました。シティのボール回しをトッテナムが奪ってからエリクセンを経由して素早く前へボールを出すことでケインのポストプレーやソンフンミンのスピードと個人技を活かした攻撃でカウンターを狙います。素早く精度の高いロングボールを出せるエリクセンの技術の高さが生きていたと思います。
②相手を揺さぶるサイドチェンジ
素早く相手DFの裏を狙うロングボールを出すだけでは単調になってしまい、相手DFにも読まれてしまいます。そこでエリクセンが見せたのはサイドを変えるロングボールです。裏へのボールを警戒している相手DFに対して裏ではなくボールサイドとは逆のサイドでちょうど相手WGとSBとの間にできたスペースを狙ってパスを出すことで、フリーで味方のSHやSBにボールを渡すことに成功していました。この時逆サイドに振られたことで相手DFは視野を逆サイドに移動させなければいけません。そうすることで相手DFの視野をズラしてマークされていた味方がマークから外れて隙を作ることにも繋がっていました。よくリヴァプールもAアーノルドが大胆なサイドチェンジをすることで相手DFの視野をズラしてマネやサラーにマークから外れて動く猶予を与えたりしていますよね。それに似たものをエリクセンも見せていたと思います。
③絶妙なポジショニング
エリクセンの大きな特徴であると思うのが、絶妙なポジショニングです。相手からキーマンとして警戒され、マークされていてもポジショニングの良さでうまくフリーになってボールを引き出せる技術をもっています。
この試合で左SBのデルフにはとある役割を与えられていました。それはエリクセンへの対応です。トッテナムの右SHとして出場したエリクセンのポジションを考えると左SBのデルフが対応しにいくのは自然であり、デルフ自身も理解していたと思います。
しかしエリクセンはデルフにマークされていることを逆手に取って見事な対応を見せています。トッテナムはゴールキックからショートパスで繋いでビルドアップをしているのですが、シティに前からプレスをかけられた時にパスコースが消されたり限定されてしまい、ボールを失う場面が何度かありました。そこでエリクセンはビルドアップ時に右サイドからボランチのいる位置まで下がっていき、パスコースを作り、ボールを引き出していました。ここで注目したいのが下がるタイミングです。早めに下がってしまうとシティのプレスをかけにいくFWとSHにマークをされてしまいますが、ベストなタイミングで下がることでマークをされないようにしています。更に下がる位置もシティのボランチと左SBデルフのどちらにもマークされないようにかなり深い位置まで下がってボールを受けたりしていました。仮にエリクセンへマークしたままついて行くと本来いるべきポジションを空けてしまうのでロングボールで狙われてしまいます。
このようにエリクセンがタイミングよく味方のサポートに入ることでシティのプレス網を崩していました。
【SBのオーバーラップでサイドを使った攻撃】
トッテナムは前半途中からエリクセンとソンフンミンのポジションを入れ替えていました。左SHだったソンフンミンが右SHに、エリクセンは左SHに移りました。おそらく対峙するシティの右SBウォーカーへの攻撃の仕掛けにソンフンミンが苦戦していたこと、エリクセンは左右どちらの足からも精度の高いキックができることを考えてポジションを入れ替えたのだと思います。
ソンフンミンとエリクセンどちらも攻撃時にはサイドから中央よりの位置でボールをプレーすることが多いのでサイドのライン側にはスペースができていました。そこにSBであるトリッピアーとローズがオーバーラップしてライン側のスペースを使うことで、ピッチの幅を広く使いながらトリッピアーの精度の高いクロスやソンフンミンの仕掛けなどからチャンスを作っていました。
【サイドの幅を使いきれないシティ】
シティといえばパスを回してボールを支配しながら相手を動かしてスペースを作って崩していくのが得意なチームですが、この試合ではシティらしさが出しきれていませんでした。
特に目立ったのが攻撃時にサイドの幅を使いきれないことです。敵陣までは侵入できるもののシュートまで持っていけなかったり、ペナルティエリアへ侵入することがほとんどできませんでした。
スターリングやマフレズがボールを持ってドリブルを仕掛ける時にも中央にはD.シルバやアグエロがいるもののドリブラーの外側には誰もいないという場面が多々ありました。いくら世界的なドリブラーとはいえ中央に人数をかけて守るトッテナムの守備陣を突破するのは容易ではありません。結局中央へ無理やりドリブルで切れ込んだところをトッテナムの守備陣に奪われて思うように崩しきれない時間が続いていました。
ではなぜサイドの幅を使いきれなかったのか。これは今回の人選によるものが大きく出ていたと思います。普段リーグ戦の試合などではWGが内側に入っていった時はSBかIHのどちらかがサイドの外側をあがって幅を使おうとしていきます。しかしながら今回起用されたメンバーでは、左SBのデルフは偽SBとしてボランチの位置あたりにポジション取るだけで外側には上がりませんでした。ボランチのギュンドアンも中央でプレーしてばかりで、サイドに走り込むような動きはほとんど見られませんでした。唯一サイドの外側をあがったのはウォーカーでしたが、攻撃に参加するよりも守備に走らされる場面が多かったです。その結果中央ばかりに人数が集中し、幅を使った攻撃ができませんでした。
おそらくグアルディオラ監督もこのことは理解していたでしょう。1stレグの反省を踏まえて2ndレグの時はメンディーを左SBで使って幅を使わせたり、右サイドをデブライネが上がってクロスを出したりしていました。
【交代枠への疑問】
シティの交代枠についてです。後半途中からジェズスをアグエロに代えて投入して前線中央で裏を狙う動きが出るようになりました。しかし2枠目は試合終了5分前である85分にデブライネとサネの投入というグアルディオラ監督にしては珍しく遅い交代となりました。
ソンフンミンに決められたゴールが77分でかなり終盤であったこと、コンディションが良くない選手が多かったことなどがあると思います。それにしても、もう少し早く対処しても良かったのではないかと思います。
シティがボールを支配していながらもサイドの幅を使いきれないことで攻撃が停滞し、中央へ無理やり仕掛けると奪われてカウンターをくらうという構図は試合全体として続いていたことであり、失点しなかったとしても内容に合った結果だといえるのか微妙なところだったと思います。ですので、スピードがあってサイドの幅を使えるサネの投入はもっと早めに行ってWGに変化をつけても良かったと思います。
例えばマフレズを下げてサネ投入でスターリングを右WG、サネを左WGにして互いに幅を取るようにすると良かったと思います。そうすれば内側を右サイドはギュンドアン、左サイドはデルフが使うことで5レーンを使いながらの攻撃ができてトッテナムの中央に分厚い守備陣を崩せたかもしれないです。
・雑記
こんな感じにシティを中心に書いていきました。シティとしては肝心のデブライネが怪我明けだったことや左SBの不足など様々な要素が重なってしまったことで招いた結果でした。その中でデルフは本職ではないポジションでプレーしたとはいえ出来は良くありませんでした。エリクセンへの対応については相手のポジショニングのうまさもあったので仕方ないにしても、中央によりすぎて幅を使えなくなる要因になってしまいました。あと失点シーンのソンフンミンへの対応でもラインから出たのではかいかという抗議をしたことで寄せが甘くなり、さらにソンフンミンにかわされてシュートをうたせてしまったという印象悪いプレーもありました。デルフだけの責任ではないにしてもデルフが夏に放出されたのも無理もないと思います。
19-20シーズンも左SBの怪我やCBの怪我で苦しんでいるシティ。最大の敵は怪我なのかもしれません。
以上
プレミアリーグ29節 チェルシーvsエバートン
プレミアリーグ29節
CLではホームでバイエルン相手に0-3の大敗したが、FA杯ではリヴァプールに2-0の勝利し不穏な流れを払拭したチェルシー。今回はチームの中心選手であるジョルジーニョをベンチからも外し、プレミアリーグデビューとなる18歳のギルモアをスタメンに起用した。また、GKは最近出番が多かったカバジェロではなくFA杯から続けてケパが出場した。
この試合ではプレミアリーグデビュー戦ながらも大活躍し、MOMにも選ばれたギルモアに注目して書いていく。
エバートンは4-4-2のフォーメーションで2トップのリシャリソンとカルバート=ルーウィンが前からプレスをかけていく。対するチェルシーは4バックの形のままビルドアップをしていく。ここでチェルシーのビルドアップで大事になってくるのがギルモアのいるアンカーのポジションだ。エバートンの2トップはアンカーへパスを通させないようにパスコースを切りながらCBへプレスをかけてくるが、ギルモアは細かく立ち位置をずらすことでパスコースを作っていた。これによって、せっかくの2トップのプレスもギルモアにパスが渡ることで大きな意味をなさずに突破されてしまう。ギルモアのポジショニングによってプレスを突破して前進でき、終始ギルモアの存在にエバートンは苦戦させられていた。
14分のビルドアップでズマからギルモアにパス。ギルモアからペドロへ渡し、ペドロが中にドリブルで切れ込んでマウントへパスし、マウントが決めて先制点を奪う。
更に21分にもギルモアからジルーへパスし、ジルーの落としからバークリーを経由して裏へ抜けたペドロがゴールを決める。
その後も後半にウィリアンのミドルシュートとコーナーキックからジルーのゴールが決まって4-0でチェルシーは勝利した。
【ギルモアについて】
ギルモアはネガトラ時も素早くプレスをかけて奪い返して攻撃へ繋げていたし、パスミスも少なかったので今後も活躍が期待できる内容であった。アンカーとして積極的にボールを受けられるポジショニングを意識し、パスで攻撃を組み立てていたギルモアの技術の高さは十分プレミアリーグで通用するだろう。
しかし良かった部分だけでなく今後の課題が見える場面もあった。例えばボールを受けようと積極的にボールに近い位置に動いていたが、アンカーというポジションをやる上ではあまりボールの位置に引き寄せられすぎるのは良くないこともある。今回のエバートン戦ではそれによる決定機を作られるようなことは無かったが、アンカーの選手が動きすぎるとDFラインと中盤の間にスペースができてしまい、相手にそこを狙われて一気に決定機を作られる可能性もある。そのためにもDFラインと中盤の位置のバランスを見ながらポジションを調整し、ボールを奪われてもフィルターとしてDFラインの前で抑えるor遅らせる守備ができるようなると、更にアンカーとしてのギルモアの才能は上がるだろう。
おそらくギルモアのプレーを見ていると2ボランチの1人としてプレーさせた方がアンカーよりもボールを貰いに動けるので良いのではないかと思う。攻撃ではドリブルで持ち運んでラストパスを出すようなプレーも見せていたので、コバチッチとカンテの間あたりの立ち位置として起用できそうだ。個人的にはギルモアを出場させるなら中盤は2ボランチにしてカンテとギルモア、コバチッチとギルモアとかでプレーさせたら良さそうだと思う。
【ジェームズのアンカー】
試合終盤にはジェームズを投入し、ジェームズをアンカーの位置でプレーさせてギルモアを1つ前のポジションにした。ジェームズのアンカー起用は今まで見たことが無かったので、ランパード監督としても試しとしての起用だったと思う。
ジェームズのアンカーは正直言って合っていないと思う。ロングパスの精度の高さを買われてアンカーを試されたのかもしれないが、ボールを受けた時の視線や動き、パスを出した位置を見ていると、あまり視野は広いわけでは無さそうだ。サイドとアンカーでは視野に入れなければいけないエリアの広さが大きく異なる。アンカーでプレーするには360°の広い視野をもって周りを見ながら長短のパスを精確に供給することが求められる。そのためにも今のジェームズにはアンカーでプレーするには役不足を感じる。個人的にはジェームズはクロスの精度の高さは素晴らしいものをもっているので、そのままSBとしてプレーするか1列前のSHとしてプレーするのが良いと思った。
CL決勝T1回戦パリサンジェルマンvsドルトムント2ndレグ
CL決勝トーナメント1回戦
パリサンジェルマンvsドルトムント2ndレグのレビューを書いていく。
1stレグではホームで期待の新星ハーランドの2ゴールによって2-1で勝利したドルトムント。ホームでの強さを発揮してパリの強力な攻撃陣を抑えながら、トランディションの早さやサンチョ、ハキミ、ゲレイロ、ハーランド、レイナといったスピードある若手選手の特徴を発揮させながら先勝した。アウェイでは戦績が良くないというデータがあるものの1stレグの内容では2ndレグへの期待を持てる試合だった。
一方パリサンジェルマンは強力な攻撃陣がいながらも1stレグは敗戦し、2ndレグのホームでは勝利が絶対条件と追い込まれた。優勝も期待されながら3年連続ベスト16止まりという嫌なデータもあり、不穏な空気が漂っている。1stレグでの内容は悪いもので、中心選手のネイマールは1ゴール決めたものの攻撃時に個人技での特徴を生かせず、逆に守備の甘さやコンディションの悪さが目立ってしまった。悪かったのはネイマールだけでなく、ムバッペもアシストした場面以外はスピードを生かすことがなかなかできず、ディマリア含めてパリの強力な攻撃陣はドルトムントの5バックに苦戦させられた。
そういった状況の中でパリサンジェルマンはどのようにしてドルトムントに勝利したのか説明していく。
【5-4ブロックを崩す算段】
ドルトムントは1stレグで5-4-1のブロックを作ってパリの攻撃を苦戦させた(ドルトムントの守備については1stレグのレビュー記事に記載)。ゴール前にいる守備の人数が多いので、なかなか突破するのが難しい。その上、中盤も4人いるのでゴール前のスペースがほとんど無く、個人技で無理やり打開しようものなら、あっという間に数人に囲まれて奪われてしまう。そんな5-4のブロックを突破するための崩しの形をパリは用意し、うまく発揮したことで勝利に繋がった。
【ライン間への侵入】
5-4のブロックを崩すために、5と4のライン間に選手を配置するようにした。このライン間にいる選手を使って相手のDFを崩していく。
まず2トップは敵3バックの両サイドにいるCBの位置に配置し、SHはライン間に配置する。そしてCBやCHからライン間にいるSHへのパスを狙わせる。こうするとボールが渡ったSHに対して敵CBが奪いにくるだろう。その敵CBが動いたことで出来たスペースに2トップを走り込ませ、素早くSHからパスが通れば決定機が作れる。SHに対して敵CBが奪いに来ないのであれば、そのままSHがドリブルで持ち込んでシュートを狙っても良いだろう。
この形で24分カバーニのシュートした場面や69分ムバッペのシュートのような決定機を作った。
ここで大事になってくるのがSHのライン間での技術と2トップの裏を狙う動きだ。
SH
・敵CHにマークされないように背後でポジション取りすること
・ボールを受けて素早くターンしてトップへパスを繋げられる技術
トップ
・積極的にDFラインの裏を狙う動き
・CBの背後でのポジション取り
これらを考慮するとSHにネイマールとディマリアが起用されたこと、トップにサラビアとカバーニが起用されたのもよく分かる。
【SBを使った崩し】
先程紹介した形と同じような配置でSBのオーバーラップを使った崩しも見られた。
ライン間までオーバーラップしたSBにパスを出すことで敵の視野をサイドにもっていかせ、そこから敵CBとゴールの間を狙ったアーリークロスを出す。敵は視野を動かしながらクロスへ対処しなければいけないので難易度が高い。また、SBからクロスを出すのが難しい状況の時はSHへパスを通して先程紹介した形にもっていくこともできるし、トップを狙って斜めにパスを出すこともできる。
この形で2点目のサラビアのクロスからベルナトが決めたゴールは生まれた。
【サイドに追い込む守備】
パリサンジェルマンの守備面でも1stレグとは違う形が見られた。ドルトムントのビルドアップ時に2トップが敵CBに対してプレスをかけていく。例えば中央のCBがボールを保持している時なら1人は中央のCBにプレスし、もう1人は左右どちらかのCBをマークすることでパスコースを限定させる。マークされていないサイドのCBにパスが渡ったら、今度はスライドするようにトップはボールサイドのCBにプレスをかける。この時に敵CHにはCH、敵WBにはSH、敵STにはSBがそれぞれマークすることで近くのパスコースを消す。こうすることでドルトムントのビルドアップを牽制し、高い位置でボールが奪えるようにしていた。
ちなみにこのサイドへ追い込む守備は敵のサイドCBに精度の高いロングパスを出せるような選手がいる場合、逆サイドへロングパスを出されてしまい、守備網を突破されてしまうので注意すべきである。あとはロングパスで前線に出すのも守備網の突破に繋がるが、長身のハーランドにターゲットマンとして仕事させないためにキンペンベとマルキーニョスが徹底的に体を当てながら競り合っていたので、ロングパスでハーランドを使って打開されることもなかった。
これらの紹介した攻守の形を用意し、試合を優位に進めたパリ。だが、これだけでなく選手の士気も高く、守備意識も高かった。1stレグでは守備意識の低さからドルトムントに試合を優位に進められたが、この試合ではディマリアやネイマールもボールを奪われたら守備へ素早く切替えていた。撤退守備時には4-4-2のブロックを作り、後半ネイマールが戻り切れていない時はカバーニがSHとしてブロックを作っていたのもチーム全体で勝利を目指している意識が出ていて良かった。後半途中からはムバッペが交代投入されたが、先発ではなかったのは守備のタスクの部分でカバーニの方が良いと判断したからだと思う。前半に2点取ったことで後半からはドルトムントが攻撃的にくるようになり、前がかりになってきたので、タイミングを計って圧倒的スピードをもったムバッペを投入することにしたのだろう。この辺の采配面でもトゥヘル監督の判断力の良さが生きたのだと思う。
一方ドルトムントは1stレグ同様の形で5-4のブロックを作って守備的に戦ったが、前半に2点奪われ、決定機も作れなかった。後半は前がかりになって攻め立てたが、パリの4-4-2のブロックに阻まれてしまった。その中で気になったのは攻撃の停滞だ。WBの裏を狙った動きやSTの動き出しもなく、足元でボールを受けようとすることが多かったことが要因の一つにあるだろう。5-4のブロックを崩しにこられた時も対応策があれば良かったが、システムを変えたりすることもなく、継続させてしまったのも要因だと思う。
以上で終わります。
CL決勝T1回戦リヴァプールvsアトレティコ・マドリー2ndレグ
CL決勝トーナメント1回戦
リヴァプールvsアトレティコ・マドリー2ndレグのレビューを書いていく。
1stレグでアトレティコ・マドリーにアウェイで0-1の敗戦をした世界王者リヴァプールにとっては絶対に勝たなくてはいけない大事な試合となった。去年のCL準決勝バルセロナ戦2ndレグのホームで4-0の大逆転勝利をしたように、この試合でもホームでの圧倒的な強さを見せてくれると期待を持ちながら見ていた人も多いだろう。
スタメンはリヴァプールは1stレグからファビーニョを代えてオックスレイド=チェンバレンが右CHで出場し、アンカーにはヘンダーソンが配置された。
一方アトレティコ・マドリーは2トップがどちらも代わり、怪我明けのジョアン・フェリックスとジエゴ・コスタが出場した。右SBもトリッピアーで右SHはコレアに代わっている。
もの凄い熱気で溢れるホームのアンフィールド。ホームでの声援を受けながら逆転勝ちを狙ってリヴァプールは前半から攻勢に出る。
【右サイドを主戦場にした攻撃】
この試合では右サイド大外側にサラーが開くことで相手SBを引き付けてハーフスペースをオックスレイド=チェンバレン(以下Oチェンバレンと表記)に使わせるのが一つ狙いであった。更にアレクサンダー=アーノルド(以下Aアーノルドと表記)を右サイド内側低めの位置に配置することでアーリークロスをあげやすいようにしながらも、サラーがボールを持った時にOチェンバレンとAアーノルドの2つの斜めパスを出せる選択肢を持てるようにしてある。また、サラーのカットインを警戒して相手が内側へのコースを塞いでくるのを利用し、サラーの外側or内側からOチェンバレンが飛び出すというのも見せていた。この右サイドでの攻撃を積極的に行ってクロスまで持っていき、中央のフィルミーノ、マネ、タイミングよく上がってくるワイナルドゥムが合わせにいく。
前半だけでも右サイドからの攻撃を何度も狙っており、対峙する左SBのロディは守備対応に終始苦戦していた。先制ゴールも右サイド駆け上がったOチェンバレンからのクロスに合わせたワイナルドゥムからもたらされた。
【堅い4-4-2のブロック】
アトレティコは前半から4-4-2でブロックを作って守備をする。2トップは1人がアンカーであるヘンダーソンをマークしながら、もう1人がCBへプレスしたり、CHが釣られてスペースが空いてしまった時は2列目に下がることでブロックを崩さないようにしている。この強固なブロックでリヴァプールに中央へ侵入させないようにしていた。
前半30分くらいから試合開始時は左SHであったサウールがCHに入り、コケが左SHに入れ替わっていた。おそらくサラーへの対応でサウールは交わされる場面が何度かあり、リヴァプールの積極的な右サイドからの攻撃を凌ぐためにもコケの方が強度の高い守備ができるからだと思う。
【猛攻のリヴァプール】
後半リヴァプールは押し込んだ時にOチェンバレンをバイタルエリアに配置し、こぼれ球を拾ってミドルシュートを狙えるようにした(雨の中で人数をかけたブロックを作っているので、シュートがディフレクションしやすい)。そして前半Oチェンバレンが担っていた役割はフィルミーノが中央から流れることで代用する。後半は前半以上に相手ブロックを崩す場面を何度も作ってゴールに迫り、バーに当たる惜しい場面もあった。いつゴールが入ってもおかしくない時間が続き、リヴァプールが勝ち越すのも時間の問題かと思われた。
アトレティコは後半途中にジエゴ・コスタを下げてM.ジョレンテを投入して右SHに配置し、右SHのコレアをCFでプレーさせる。前半に比べて疲労もあって2トップの守備が緩くなり、ブロックが崩れる場面も何度か出てくる。ジエゴ・コスタの交代もコンディションが整っていなかったことや守備の緩さからの決断だっただろう。延長前半にはトリッピアーを下げてヴルサリコを投入して更に守備的にする。
延長前半ワイナルドゥムが右サイド大外側からドリブルで突破してクロスを上げ、合わせたフィルミーノが一度はGKに防がれるが、こぼれ球を拾って2点目が決まる。しかし2点目を決めた直後、思わぬところでミスが生まれる。前からプレスをかけられたリヴァプールは一旦GKアドリアンにバックパスをする。アドリアンはダイレクトで蹴るが、これがミスキックになり、低い弾道のボールはジョアン・フェリックスに渡ってしまう。最後はM.ジョレンテが際どいコースのシュートを決めて合計スコア2-2のアトレティコがアウェイゴールで有利になる。
再び危機に立たされたリヴァプールは疲労困憊の中で攻撃的に戦っていく。ひたすらに攻撃をするリヴァプールと、ゴール前で人数をかけて守り切ろうと必死なアトレティコ。その状況下で、まさかの展開になる。左サイドでボールを持ったフィルミーノがカットインしたところをM.ジョレンテにカットされ、モラタへパス。モラタはドリブルで駆け上がり、相手3人を惹きつけたところで中央へパス。パスを受けたM.ジョレンテがまたも見事なシュートを決めて合計スコア2-3のアトレティコが大きく優位になる。更に延長後半終盤にモラタにもゴールが生まれてアトレティコの勝利となった。
【勝敗を分けた少しのミス】
リヴァプールとアトレティコどちらも120分間全力でプレーして戦っていたのは間違いない。しかし勝敗を分けたのはその中で生まれた少しのミスだと思った。GKアドリアンのミスは特に印象的であるが、あの場面はアトレティコが前からのプレスを延長戦でも続けたことも起因であるし、アドリアンとしては焦ってダイレクトで蹴ったことやアドリアンのボールを受けるポジションが前に出すぎであったこともあるだろう。リヴァプールの2失点目もDFの対応にも少し問題があったとも言える。失点部分だけでなく、攻撃の部分でも少しのパスの選択ミスやタイミングのズレがゴールに繋がらなかったのもあった。延長戦になってホームのリヴァプールの方が集中力がきれてきているように見える場面が多く見えたのも勝敗を分けたと思う。アトレティコも2失点したもののゴール前でのミスがなく、アウェイの厳しい環境下で最後まで集中して守備ブロックを作って自分たちのスタイルで戦っていた。世界王者であるリヴァプールの猛攻をひたすらに守れるのもアトレティコだからこそであると思うし、その気迫と最後まで戦う姿勢は素晴らしかった。
非常にレベルの高い試合であったので見ていて満足いく試合だった。
プレミアリーグ28節ワトフォードvsリヴァプール
昨年はCL優勝し、今季はプレミアリーグで17連勝リーグ戦41試合連続無敗という圧倒的な強さを見せていたリヴァプール。
しかしそのリヴァプールが2月19日のCL決勝トーナメント1回戦1stレグでアトレティコ・マドリーに0-1で敗れ、3月1日にはリーグ戦でワトフォードに0-3、3月4日FA杯でチェルシーに0-2という信じられないような結果が続いている。また、この敗れた3試合は共通して無得点というのも驚きである。
今回はワトフォード戦を見てきてリヴァプールの敗戦の原因を自分なりに書いていく。
ワトフォードが用意した戦い方は、基本守備的に戦い、セットプレーとカウンターで得点を奪いにいくものだった。
①強固な4-5のブロック
4-5のブロックを作り、マネやサラー のスピードあるFWにDFライン裏を狙われないようにDFラインは基本的に上げすぎないようにする。中盤は5人いることで中央の数を増やし、フィルミーノが下がってきても中盤が数的不利にならないようにしている。
②相手SBへはSHに対応させる
リヴァプールの大きな特徴である強力な両SBの攻撃参加だが、そのSBにはSHがついていくことでサイドで数的優位を作られないようにする。
③サイドチェンジへの対策
アレクサンダー=アーノルドのサイドチェンジからスライドのズレを狙われて中央を突破されるのは今までの多くの対戦で何度も見てきた。それに対してはSHとOMFとCHの3人でサイドへのパスコースを遮断し、簡単にはサイドから攻撃ができないようにしている。
④ブロック外でのボールにはプレスしすぎない
ブロック内でボールがなかなか渡らない中で、リヴァプールの選手がブロック外に降りてきてボールを受けにいくことがある。この降りていく選手に対してはついていきすぎず、ブロックを崩さないようにする。
⑤CFのカバー
CFもブロックに入ることでブロック内の1人が釣られて穴が空いてもすぐに埋めることができるのでスキが少ない。
こういった守備をすることでワトフォードはリヴァプールに対して攻撃を停滞させ枠内シュートを1本だけに留めることに成功した。
次はワトフォードの攻撃についても書いていく。
攻撃のパターンとしては主に2つ。
1つは奪った時に素早くSBの裏を狙って素早くシュートまでもっていく。これは多くのチームが対リヴァプールに限らずカウンターで狙う箇所として見られる。
2つ目はディーニーを狙った攻撃だ。GKのゴールキックやリヴァプール陣地の深い位置のスローインなどではCFのディーニーに空中で競らせるようなボールを送っていた。ディーニーは体が強く、空中戦も強い選手であるのを生かして、ディーニーをターゲットに狙っていく。ここでわざとハーフスペース辺りで競らせるとリヴァプール側は右CBのロブレンが対応することになる。このロブレンとの対決でディーニーが競り勝つorロブレンをピン留めさせることで、ロブレンの空けたスペースをサールやデウロフェウ(ペレイラ)に使わせることでゴールに迫っていた。ディーニーの強さを使いながらファンダイクを避けてリヴァプールの急所をつく見事な攻撃だ。
【リヴァプールの課題】
ここ最近うまく勝ちきれていないリヴァプールの課題について考えた。
①ハーフスペースへの飛び出し
相手に守備ブロックを作られた時に大事になってくるのがハーフスペースの使い方だ。主にリヴァプールの攻撃ではWGが内側を使い、SBが外側を使っていく。この時にWGとSBの間のスペースをCHに飛び出させダイレクトでパスを出していくことで崩すパターンがマンチェスター・シティではよく見られるがリヴァプールだとあまり見られない。
②SBの裏を狙う動き
WGが裏を狙う動きをすることには相手も対策をとってSBが付いていったりCBと挟みこんで阻まれる可能性もあるが、リヴァプールの大きな武器であるSBがWGとCFの間にタイミングよく飛び出すことで崩すパターンをもっと狙えるようにしたい。実際シェフィールド戦1点目のようなロバートソンが背後を取ることで素早くゴールにもっていった場面を見てもらうとわかると思う。
CL決勝T1回戦 チェルシーvsバイエルンミュンヘン1stレグ
CL決勝トーナメント1回戦
チェルシーvsバイエルンミュンヘン1stレグの試合レビューを書いていきます。
シュート数9-16
枠内シュート数3-6
ボール支配率36%-64%
【CHの攻防】
この試合の勝敗の鍵になったのは如何にチェルシーの中盤とCBの間にスペースを作れるかだ。このCBの前にできたスペースをバイエルンは使ってCBを釣り出しながら崩していく狙いがあった。ではこの狙いを通すためにバイエルンはどのようなプレーをしていたか説明していく。
①ビルドアップ
2人のCBとSBパバールとCHキミッヒで最終ラインを作り、その1列前にチアゴが中央で位置取ってパスを回して前進していく。(左SBのデイビスは大外高い位置を取っている)
チェルシーはそれに対して3人がプレスにいく。しかし3人でそのままプレスしても5vs3で数的不利なのでボールを奪いきれない。序盤はバイエルンにそのまま前進を許してしまい決定機を作らせてしまっていた。
そこでチェルシーはCHの1人であるジョルジーニョが前に出てきてチアゴをマークするようになる。すると今度はジョルジーニョの上がって空いたスペースに出てきたミュラーを使ってプレスを突破されてしまう。この時にCBボアテングから1度キミッヒにパスしてからキミッヒが素早くSBパバールにパスすることで相手を誘い出す。これによってミュラーの周りにスペースが出来上がる。
結局ジョルジーニョはチアゴとミュラーの間を取るような位置で両方を見ながらプレーするようになる。(途中からはチアゴとキミッヒの位置を入れ替えて惑わしてくる場面もみられた)前半はジョルジーニョがミュラーとチアゴを見ながら耐え凌ぐ場面が多い中で両者得点を許さずに前半終了した。
②GKを使った攻撃
先程説明した通り前半はジョルジーニョをバイエルンのCHが誘い出しながらスペースに出てきたミュラーを使って攻撃をしていたバイエルン。後半からは更にCB前のスペースを広げるためにGKを使って攻撃をしていく。
まずは前半に比べてDFラインを下げて、低い位置でビルドアップを開始するようになる。ラインが下がることでチェルシーのプレスも前掛かりになっていく。ここで1度GKに下げてGKからCB前のスペース(左より)にいるレヴァンドフスキを狙ってロングボールを出す。レヴァンドフスキがそのままポストプレーができればミュラーへ渡るので一気に決定機を作れる。例え空中戦で勝てなくてもこぼれ球をニャブリ、ミュラーが拾えればスピードと個人技で十分決定機を作れるだろう。
あえて自陣の低い位置でボールを持つことで奪いにきた相手の裏のスペースを使った見事な攻撃であった。これができるのも高いキックの技術をもったGKがいることと高さのあるFWがいることによって成せる攻撃だろう。
バイエルンの2点目のゴールは狙い通りと言えるようなGKノイアーのロングボールからレヴァンドフスキ→ニャブリと繋いでの攻撃であった。1点目もCB前のスペースが関係していて、チアゴがうまくコバチッチを誘ってから出したニャブリへの浮き球のパスにアスピリクエタが足を取られて滑ってしまい、そのままニャブリにドリブルを許してしまったところからゴールが生まれた。チアゴの技術の高さやアスピリクエタの滑ってしまったことによるものもあるが、うまくチェルシーのCHを引き寄せたことで生まれたスペースを使ったプレーでもある。
【バイエルンの左サイド】
左サイドではデイビスが高い位置を取ることで内側に入ったニャブリと連携で崩せる形を作っている。対してチェルシーも右サイド(バイエルン側の左サイド)はジェームズとアスピリクエタが対応していたが、ミュラーがサポートに来たりデイビスとニャブリの圧倒的なスピードと個人技には終始苦戦していた。3点目のゴールは正に左サイドの強力な個人技で生まれたゴールと言える。
【あとがき】
この試合を見ていてミュラーの重要性と高い技術を改めて感じた。ミュラーはバイエルンにとって攻撃時のリンクマンとしての役割やゴール前でフィニッシャーや囮りとしての役割を持ち、リーグでは5ゴール14アシストという素晴らしい成績を残している。やはりミュラーの存在はバイエルンにとって欠かせないことがわかる。他にもキミッヒとチアゴがうまく入れ替わりながらビルドアップすることで相手に対応しづらい状況を作ったり、相手の出方を見ながらビルドアップの形を変えて戦えるインテリジェンスの高さも見せていた。アラバの精度の高いキックも大きな武器になっており、対角線のロングボールでデイビスへ一気に展開したり、ミュラーへの斜めのパスを通すなど長短のパスを使い分けながら攻撃を組み立てていた。ニャブリとコマンのスピードあるドリブラーも最初は内側に位置取らせながら外側へ向かって斜めに走らせることで相手DFを撹乱させ、ミュラーやレヴァンドフスキとの連携で決定機を演出した。2点目が入ってからはデイビスには本来のSBの位置でプレーさせてリスク管理をしながらもマイボールになった時は横幅を使いながら攻めることで相手をサイドに引っ張り出してクロスに持っていくという手数を減らしながらも攻めの姿勢を見せる戦い方をしていたのも見事である。
チェルシーはホームでありながらバイエルンに3失点という難しい試合をさせられた。得点も取れず2ndレグにはジョルジーニョの出場停止もあるので厳しいことは間違いない。今回の試合でチェルシーの課題として見えたのはジルーの使い方と前からのプレスの曖昧さである。
エイブラハムの怪我もありスタメンで出場したジルーであるが、今回は大きな見せ場は作れなかった。ジルー自体のパフォーマンスが良くないというよりもジルーをどう使っていくかチームとして作られていなかったように見えた。例えばジルーはポストプレーが得意な選手なので、ジルーをパバールの位置でロングボールを競らせて起点にするとか、低い位置からでもジルーを狙ったボールを出しても良かったと思う。前からのプレスでもジルー、バークリー、マウントの3人が誰に対してプレスをするのか曖昧で、結局バイエルン側にうまく利用されてしまう形になってしまった。あえて数的不利の時はプレスに行かず中央へのコースを切りながら引いて守る戦法でも良かったかもしれない。
攻撃面ではマウントがハーフスペースを抜け出して裏を取る場面があったが、デイビスのスピードある守備対応で決定機を生かし入れなかった。左サイドではアロンソとコバチッチがうまく内側と外側を使い分けながら突破する場面があったように左サイドの方がバイエルンの守備を崩しやすかったかもしれない。マウントを左サイド(途中でマウントとバークリーの位置が入れ替わっていた時はあったが一時的なものだった)にしても良かったと思う。ジェームズは精度の高いクロスをもっている選手だが今回はあまり上がることができず守備に追われる時間が長かった。デイビスvsジェームズの場面ではデイビスに軍配があったのもありジェームズにとっては苦しい試合だった。3バックを使ったことに関してはレヴァンドフスキやミュラーにゴール前で自由にさせないという面では良いのだが、中盤と前線との連携が取れておらず、前がかりにいくのか引いて守るのかが曖昧であったことが良くなかった。
こんな感じで色々書いてきましたが、2ndレグに少しでも修正して巻き返しを狙えたら良いですね。
CL決勝T1回戦 ドルトムントvsパリサンジェルマン1stレグ
CL決勝トーナメントの1回戦
ドルトムントvsパリサンジェルマン1stレグの感想を書きます。
ドルトムントとパリサンジェルマンはCLの試合くらいしか見ないので普段のリーグ戦ではどうなのか知らないが、レベルの高い面白い試合だった。
ドルトムントとパリサンジェルマンどちらも3-4-3のミラーマッチとなった。
それでは今回の試合で2ゴールという大活躍したハーランドの活躍と共に試合内容を書いていく。
前半
パリが試合開始から10分程は激しくプレスにいく。3トップはそれぞれ同エリアのCBにプレスし、GKへのバックパスにもネイマールがプレスにいく。WBへも同サイドのWBが激しく奪いにいき、前から奪う姿勢をみせていく。しかしGKのビュルキからロングボールでハーランドを狙うことでプレスをかわされてしまい、なかなか前でボールを奪えない。これは今まではGKからアバウトに蹴らざるを得なかったボールがハーランドというターゲットを狙うことでポストプレーからマイボールにできるというハーランド加入の大きな効果だ。
守備ではドルトムントはCBやCHに対しては激しくプレスしにいかず、ハーランドに中央へのコースを切らせながら中央にコンパクトな5-4のブロックを作って中央には侵入させない守備をする。ハーランドは攻撃だけでなく1stディフェンダーとしても貢献を見せていた。
それでもゲイエやベラッティは何度か中央へ隙間を狙ってパスを通そうとするがヴィツェルやジャンが素早く寄せてすぐに奪い返す。逆にドルトムントはボールを奪ったらヴィツェルが左サイドに流れながらゲレイロにハーフスペースを狙ったパスを出す。また大外にはアザールが広がって幅を取ることでサイド攻撃に厚みを増す。他にも素早くサンチョに渡すことでスピードあるドリブルで突破してシュートまでもっていったりもする。
20分過ぎたあたりからはサンチョがアザールと位置を変えて左サイドでプレーするようになる。(試合の流れの中で選手個人の判断?)
パリはなかなか中央へのパスが通せず、3トップへもボールが渡らないので、ネイマールやディマリアがボールを受けに下がってくる。しかしネイマールに対してはピシュチュクが徹底的について行って前を向かさないようにする。さらに中央を通させないドルトムントの守備とフンメルスのマークによってムバッペは前半のうちはボールを全然触れなかった。
後半
お互いあまりリスクをかけずに攻撃をしていたが、後半からはどちらも攻勢に出る。
パリはWBが前半よりもライン間に位置取るようになり、不用意な縦パスが減り、ムバッペは裏を狙うようになった。ネイマールは前半よりも低い位置まで下がってボールを受けに来ていたが、前半同様ピシュチュクがべったり付いていく。
ドルトムントはホームで勝ちを取るためにも攻撃時にボールサイドのCBも上がるようにして攻撃の人数を増やしてくる。
するとジャンからのロングボールをハーランドがポストプレーで落として右サイドのハキミにパスをする。パリのWBが前に出ていたため、フリーでボールを受けたハキミはドリブルで一気に駆け上がる。高い位置まで上がったハキミからのクロスを最後ハーランドが決める。
しかしパリもすぐに点を取り返す。右サイドのブロックの外でボールを受けたムバッペがスピードあるドリブルで一気にかわして深い位置まで侵入し、低い弾道のクロスをあげる。ファーサイドにいたネイマールが合わせて同点になる。守備対応が少し甘かったとはいえムバッペの個人技とスピードが上手く生きた場面だ。
同点ゴールでパリがそのまま勢いを上げるかと思いきや、フンメルスが一気に前線にいたレイナ(アザールと交代して投入された)に早い斜めのパスを通す。レイナはドリブルで駆け上がり、CBを引き寄せたところでハーランドへパス。これをハーランドが豪快なシュートを叩きこんで勝ち越しゴールを決める。一度CBまでボールを下げたことでパリの中盤が前に出たのを逆手にとったフンメルスの見事なパスだった。その後のレイナとハーランドも落ち着いた見事なプレーだったし、同点にされてすぐに勝ち越せたのは大きかった。
結局スコア2-1で試合終了した。
【あとがき】
私は予想ではドルトムントが勝ち進むと予想している。個人的にサンチョ、ハーランド、ゲレイロ、ハキミといったスピードと縦への突破力ある選手たちによる攻撃が好きで、先へ勝ち進んで欲しいと思っている。
そういった中でホームで勝ちを取りたかったドルトムントにとって勝利できたのは良かった。しかしアウェーゴールを1点取られてしまったので、2ndレグでパリに1-0で負けるとアウェーゴール差で敗退になってしまうという不安要素が付き纏う。今回の試合はハーランドの2ゴールだったが、サンチョにも惜しいシュートの場面はあったし、パリが前がかりになった裏を狙えれば十分アウェーでも勝機はあると思う。
逆にパリは1stレグを落としたことで2ndレグのホームでは絶対に勝つ必要があるわけであるし、連続でベスト16で敗退をしているという嫌な記録もある。今回の試合ではネイマールは怪我明け最初の試合であったというのもあってコンディションが良くなかったので2ndレグまでに調子が戻れば、強力なタレントは揃っているので勝ち進むことも可能だろう。個人的に気になったのは3トップの連携とWBの働きだ。ネイマールが下がってボールを受けに来た時に、ピシュチュクが付いていくので、本来ネイマールがいた場所にはスペースが生まれる。そのスペースをムバッペが使ったりするようなスペースを作り合う連携ができていなかったのは残念であった。WBもなかなかトップや中盤との連携が少なく、ドルトムントのブロックを揺さぶるようなプレーがなかったので、よりチームとして崩せる場面がほしいところだ。個人的には2ndレグでは攻守で貢献でき、スペースを作る動きや得点力もあるイカルディの起用があると思うので、イカルディのプレーに注目していきたい。