CL準決勝レアルマドリーVSマンチェスターシティ

21-22 チャンピオンズリーグ準決勝2ndレグ

レアルマドリーvsマンチェスターシティの試合レビューを書いていきます。

 

1stレグではスコアこそ4-3という拮抗した数字であったものの、内容では多くの場面で圧倒し、追加で2点か3点ほど取れてもおかしくない程決定機を創出していたマンチェスターシティが盤石に2ndレグでも勝ち進むだろうと予想していました。

レアルマドリーは1stレグは落としたものの1点差しかないので十分挽回可能であり、決勝トーナメントでは逆転勝利で勝ち進んでいることを考えると2ndレグは大きな一戦となりました。

 

 

スタメンは1stレグからシティは両SBが変わり、怪我で離脱していたウォーカーとカンセロがSBに入りました。ウォーカーは3週間ほど足首の怪我で離脱しており、直前の試合でも出場しておらず、出場が危ぶまれていました。一方のレアルマドリーは1stレグで怪我をしたアラバは出場できなかったものの、カゼミーロが復帰しました。WGにはロドリゴではなくバルベルデが起用され、まずは失点をしないようにバランスを取りながら途中交代でロドリゴやアセンシオを投入して攻勢にくるだろうと予想される人選となりました。

【シティのプレス】

積極的に1stレグと同様にプレスを仕掛けていくシティはCFジェズスが敵CBにプレスしながら敵GKにもプレスしていきます。デブライネがもう一方の敵CBへプレスしてWGは敵SBをマークし、アンカーのカゼミーロにはベルナルドがマークすることでパスコースを消していきます。プレスによってレアルマドリーはビルドアップに苦戦し、思うようにパスを通せずに奪われる場面が何度も見られました。

プレスを回避されても、サイドにボールを誘導してそのまま逆サイドをフリーにする代わりに同サイド圧縮する守備でパスコースを消して奪っていきます。

【サイドから仕掛けていくレアルマドリー

ビルドアップでなかなか中央ではボールを持てないレアルマドリーはサイドからパスを繋いで攻撃を仕掛けていきます。左サイドのヴィニシウスは右SBウォーカーによってドリブルでの突破を許してもらえませんでしたが、右サイドではバルベルデが中央でモドリッチと連携しながら大外高い位置に開いたカルバハルにパスを通して、そこからのクロスでチャンスを作っていきます。

一度左サイドでボールをもってシティのプレスを誘導しながらクロースの精度高いサイドチェンジで右サイドに展開してカルバハルのクロスというパターンでうまくシティの同サイド圧縮する守備を回避していました。

【0トップに変更するシティ】

レアルマドリーベンゼマモドリッチの二人でロドリへのパスコースを塞ぎ、WGのヴィニシウスとバルベルデは敵SBへのコースを消していきます。ベルナルドが下がってボールをもらいに行った時はカゼミーロがプレスしに行ってシティのビルドアップを阻害していました。

デブライネにはクロースがマークしたもののフィジカル面やマークを外す動きで優位に立っていたデブライネがエデルソンを経由してボールをもらうことでプレスを回避していました。他にもエデルソン経由で裏を狙ったりすることでプレスを回避していました。サイドからの攻撃の仕掛けでチャンスを作っていき、枠内へシュートを打つ場面も作れていたもののクルトワの好セーブによってゴールは奪えませんでした。

35分あたりに中央でなかなかボールがもてないことやビルドアップがスムーズにいかないことを危惧してグアルディオラ監督は選手の立ち位置を変更してきました。ジェズスとフォーデンを変更してフォーデンの0トップにすることでビルドアップでのパスコースを作り出し、優位に攻撃を進めていけるようになりました。

【ウォーカーの交代】

右SBに怪我明けながらスタメン出場したウォーカーはヴィニシウスとの1vs1では自慢のスピードを生かして優位に立てており、ヴィニシウスは苦戦していました。しかしながら怪我明けで万全ではないこともあり、71分に走れなくなり交代しました。ジンチェンコが代わりに左SBとして入り、左SBだったカンセロが右SBに入りました。

すると交代後直ぐに交代で入った選手が活躍します。ボールを奪ったジンチェンコがギュンドアン(ウォーカー交代時に同時でデブライネを下げてギュンドアンを投入)に繋ぎ、中央のベルナルドへ渡るとドリブルで仕掛けて敵を引き付けたところで左サイドへパスします。そこにマフレズが落ち着いてシュートを打ち、ゴールネットを揺らすことに成功します。スコアは0-1で1stレグと合計3-5で2点のリードをもったシティは試合を終わらせにかかります。

【終盤の逆転劇】

2点のリードを得て残り18分程という状況になったシティは試合を終わらせにいきます。勝利を近づける得点を決めたマフレズを下げてフェルナンジーニョを入れることで守備に回れる人数を増やして時間を使いながら盤石に試合を進めていきます。

一方のレアルマドリーは攻勢に出るためにクロースとモドリッチを代えてロドリゴとアセンシオを投入します。このままシティが守り切って試合が終わるかと思われた90分に試合が動きます。ベンゼマからの折り返しのパスにロドリゴが合わせて同点になると、92分にカルバハルのクロスからロドリゴがヘディングで合わせて逆転に成功します。合計スコアでは5-5であるものの奇跡的なゴールでレアルマドリーに一気に流れが来ました。延長戦では一度ボールをGKに下げたところから右斜めにパスを通してカマヴィンガがドリブルで縦に持ち運び、右サイドで受けたロドリゴからのクロスにベンゼマペナルティエリア内で倒されてPKを獲得しました。これをベンゼマが決めて合計スコアでも逆転に成功したレアルマドリーが勝利しました。

【試合を分けた要因とは?】

この試合で大きな話題になっているのがシティの負けた要因についてです。多くの人が何が要因で負けたのか、何がいけなかったのか頻りに議論されています。私は今回のシティの戦い方や試合内容、采配について大きな要因は存在しないと思っています。できる限りの策は投じていたと思いますし、2点リードして残り時間十数分であれば守備的な交代で試合を終わらせにかかるのも合理的であると考えます。ウォーカーが万全だったら...交代して入ったグリーリッシュのシュートが入っていれば...などたらればで考えれば色々あるでしょうけれども、あの状況で打てる手は全て出し尽くしたのではないかと思います。敢えて挙げるならマフレズではなくカンセロを下げてフェルナンジーニョを右SBに入れた方が万全だったのかもしれないというところでしょう。カルバハルに前半から何度かクロスを上げさせており、カンセロの守備面は不安要素ではあったのでフェルナンジーニョにした方が良かったかもしれません。しかしながらフェルナンジーニョは本職SBではないこと、ベンチには本職SBがいなかったこと、スピード勝負されたらフェルナンジーニョでは不安であることなど絶対にカンセロを下げるべきだったと言い切れるほどではないという考えもあります。この結果は両者ともに強力な選手がそろっていて持てる力を出し切ったからこそ起こった奇跡であると思いました。こういった逆転劇が起こるからこそサッカーは面白いですね。

 

 

PL第3節リヴァプールvsチェルシー

21-22 プレミアリーグ第3節

リヴァプールvsチェルシーの試合をレビューします。

 

開幕2連勝し、昨シーズンと違って大きな怪我人も無く上々のシーズンをスタートさせているリヴァプールは開幕2試合連続複数得点&クリーンシートで勝利しているチェルシーをホームに迎えての試合になりました。アウェーチームは前節アーセナルに対して新加入ルカクの活躍や選手の質やチームの連度を遺憾なく発揮しての勝利というのもありレッズにとってはシーズン最初の厳しい相手との勝負となりました。

 

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スタメンはこのようになりました。ホームチームは前節で良いプレーを見せていた若手のエリオットをIHに起用し、他のメンバーは2年前のCL決勝に挑んだベストな面子が出そろいました。

アウェーチームも前節からはコバチッチがカンテに入れ替わったことと、マウントとハヴァーツの位置が入れ替わりましたが、こちらもベストメンバーといえる選手たちがそろっていました。

 

リバプールは積極的に前半の序盤からプレスをかけに行きます。

リヴァプールのプレス】

CFフィルミーノが敵ボランチの1人をマークし、WGが敵CBにプレスしていきます。もう1人の敵ボランチにはWGがマークしているときとIHがマークしに行く時があり、状況に合わせてマークする敵を変えながらサイドへ追い込む守備を行っておりました。

例えばサイドのアスピリクエタにボールが渡った時はマネがプレスし、フィルミーノがジョルジーニョをマークして、ヘンダーソンがカンテをマークすることで中央へのコースを塞ぎながら敵WBへパスを誘導するようにプレスしていきます。そして敵WBに対してはSBロバートソンが上がることで最終的にはSBとIHとWGの3人で囲むように包囲することでパスコースを遮断して奪っていきます。

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中央へのコースを切ってマネがプレスする

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更に追い込むことで敵WBを囲い込む

逆サイドの時は少し違っていてサラーが敵CBにプレスするところまでは同じだが、エリオットがジョルジーニョのマークをしたり、マネがカンテのマークをすることでサイドに追い込んでいきます。

このプレスによってチェルシーは思ったようにショートパスが繋げず、前節見せたような強力な攻撃がうまくいきませんでした。特に前節のアーセナルとの決定的な違いはプレスに連動性があり、強度やスピードも高かったことです。プレスに穴があって連動していなければ回避することで逆にチャンスを作れますが、リヴァプールは回避させてもらえるような穴もなく質の高い守備ができていました。

ルカクに対してのロングボールもファン・ダイクが見事に対処しており、チェルシーとしては攻め手に苦しむ場面が多くありました。

チェルシーの攻撃の狙い】

今回チェルシーはカウンターを主体とした攻撃の狙いをもっていました。STであるマウントとハヴァーツがポジトラ時に一気に敵SBの裏にあるスペースへ飛び出すことでリヴァプールの1番守備が甘いところを突いていきました。

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またマウントとハヴァーツは最初は中央付近で守備をし、中央へのコースを切ることで相手にサイドから攻撃するように誘導させていました。敵SBにもオーバーラップを促すように中央からサイドに向けてプレスをして上がらせたところをWBに敵SBと勝負させて奪ったら即サイドへ走り込むSTを狙ってパスを出すという狙いを持っていました。WBのところで奪えなくても対人の強いリュディガーとアスピリクエタSCBにはいますし、リヴァプールはもともと中央を固められた時に崩すのが得意ではないので、相手の特徴を理解した上での対策に思えます。

チェルシーの守備】

リヴァプールのビルドアップに対してはルカクファビーニョへのマークについて中央へのコースを切りながら、ハヴァーツとマウントが2人の敵CBにプレスをかけていきます。敵SBにはWBがチェックし、敵IHにはボランチが対応することでパスの出しどころを塞ぎににいきました。

この守備がうまくハマらなくなると、プレスは一旦やめて前線3人で中央へのコースを切ってゾーンで守備をする形に変えてきました。中央を塞いでサイドから迂回させるようにすることで中央をより空間を狭くさせ、ボールは保持できても最後フィニッシュにもっていかせない守備をしました。敵SBに対してはSTが中央を切りながらプレスすることでオーバーラップを促進させて自分たちのカウンターする際のスペース確保もしていました。

リヴァプールのビルドアップ】

CB2人が大きく距離を取りながら4バックの形そのままでビルドアップする時もありましたが、ハヴァーツとマウントがCBに対してプレスしてくることとSBには敵WBが対応しにくることを確認してからは形を変えていました。

SBには高い位置に上がらせてIHがSBの位置に降りてくることで、相手のマーク対象を狂わせて優位にビルドアップを進めていました。

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他にもIHが中央であえて敵ボランチにマークさせることで、その間で受けようと降りてくるフィルミーノに斜めのパスを通したり、うまく相手の守備に合わせてビルドアップの形を変えながら作っていくのは見事でした。

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【サイドで数的優位を作るリヴァプール

チェルシーの硬い守備によってサイドから攻撃する頻度が多いリヴァプールはサラーやマネの個人技で無理やり打開するのではなく、IHがサポートに入りながら数的優位を作っていました。大外でサラーがボールをもった時にIHが追い越す動きをすることで敵WBに対して2vs1の状況を作っていました。更にSBがサイド内側に入ることで大外でクロスをあげたり突破する以外にもマイナスのパスでSBに渡してクロスに繋げるという選択もできるので厚みのあるサイドからの攻撃が作れていました。

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最終的にスコアは1-1のドローとなり、後半はチェルシーに退場者が出てリヴァプールが逆転までもっていくかと思いましたが、1人少ないながらもチェルシーはプランを変えて勝ち点1を維持しながらワンチャンス個人技で打開すれば勝ちもありえるかもしれない戦い方をしました。具体的には5-3または5-4のブロックでスペースを消しながら奪ったらルカクとマウント、ハヴァーツで素早くカウンターを狙うというものでした。この辺りの素早いプランの変更で穴を作ることなく戦えるところがトゥヘル監督のチームであると感じます。

退場者がでなければ後半も更に白熱した試合になっていたでしょうし、どちらもリーグ優勝を狙える質の高いチームになっているので今後も目が離せない2チームです。

 

最後に今回リヴァプールが行った前からの守備は前節アーセナルが行いたかった守備だったのではないかと思います。しかし前述したように

強度や連動性などに差があったので改善させていく必要があります。アルテタ監督の目指したいサッカー自体は他のビッグクラブと引けを取らないものだと思いますが、今あるスカッドや立ち位置を考えるとこのまま同じように続けていのか疑問にも思います。一旦立ち位置を考え直して目指したい順位を狙える現実的なサッカーをしていくのも手ではないかと思います。

PL2節 アーセナルvsチェルシー

21-22 プレミアリーグ第2節

アーセナルvsチェルシーについてレビューします。

開幕戦では0-2で数十年ぶりに昇格したチームに敗戦という無惨な結果だったアーセナル

対するチェルシーはホームで圧倒して4-0の快勝という対照的な試合をしたロンドンのチーム同士の対戦になりました。

 

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アーセナルはホワイトが体調不良によりホールディングが代わりに出場し、右SBにはセドリック、1トップにはマルティネッリという布陣になりました。オーバメヤンはベンチに帰ってきてはいるもののストライカーがいない状態でのスタートになりました。

アウェーチームは前節より右サイドがCBにアスピリクエタが降りて代わりにジェームズがWB、STにはハヴァーツ、CFにはルカクが入りました。注目すべきはやはり約150億の移籍金をかけて数年ぶりに復帰したルカクなのはいうまでもないでしょう。彼の圧倒的な身体能力の高さから繰り出されるフィジカルコンタクトの強さや強烈なシュート、落ち着いて周りをサポートする冷静さなど世界最高クラスのFWです。彼にいきなり良いパフォーマンスを出させないように守備を機能させられるのか、そして連敗を避けるためにも負けられない試合になりました。

 

【ハメきれない守備】

アーセナルは相手のビルドアップに対して1トップのマルティネッリが敵CBにプレスし、スミスロウが敵ボランチの1人(ボールサイド側)をマークします。SHは敵CBの近く位置で構えてボールが来た時にプレス、敵WBにはSBが前に出てプレスします。ここで空いてくるのがマークされていない方の敵ボランチです。このポジションの選手に対してはスミスロウがスライドしてプレスし、SHがスミスロウがスライドして空けた敵ボランチへマークしにいくという守備をしていました。おそらくスミスロウに中央へのコースを切らせて、CFとSHで敵CB3人にプレスしてパスコースを追い込んで、敵WBに出したところをSBがプレスすることで奪いにいくという狙いがあったのだと思います。

・アルテタ監督の狙った守備(ペペとサカのポジションが逆でした。すみません。)

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パスコースをサイドに追い込んでいき、

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ボールがサイドに行ったら逆のSHは敵ボランチをマークしにいくことでコースを消していき、最後敵WBへ渡ったところでSBがプレスして奪い去るという狙いでした。

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しかしあっさりマークされていない敵ボランチにパスを通されて前進を許してしまい、一旦リトリートして守備ブロックを作りに行かなくてはいけない状況にもっていかれてしまっていたのは問題でした。

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チェルシーはGKを経由したりボランチレイオフすることでスミスロウがマークしていない方のボランチへパスを通していきます。

更に気になるのはSTマウントへの対応です。マウントに対してポジション的にはボランチかCBが対応すべきだと思います。一応ジャカがマウントに対してマークする場面が何度も見られていますが、マウントがサイドに流れた時にはマークを外してフリーにさせてしまい、サイドで敵WBとルカクをサポートする動きを自由にさせてしまっていました。1失点目はまさにジャカがマークを外した後にティアニーがマウントに対応したことでジェームズがフリーとなってクロスを上げさせてしまったのがルカクのゴールに繋がりました。また、あの場面はコバチッチが反転してルカクに縦パスを通したのも大きく関与していますが、あの時にコバチッチに激しくマークしていれば反転してパスを出させることを防げたでしょう。一応マルティネッリがコバチッチに対応していたようですが、マルティネッリとしてはコバチッチがCBにパスを返すと予想して前掛かりになっていたことで、逆をついてターンさせられてしまいました。これも結局ボランチへマークする選手が曖昧で、スミスロウに2人を見させるという難しい守備をさせていたことによる弊害と言えます。

サイドへ追い込む守備をするにしても中央を通されているのでは意味がないので、SHを最初から1人は敵ボランチにマークさせて、もう1人のSHとCFで敵CBにプレスしてコースを限定させていくとか、スミスロウとCFで敵CBにプレスしてボランチはそのまま1列上がって敵ボランチにマークをついてSHが敵WBへのコースを切るといったような突破口を簡単には作らせないマンマーク気味の守備が必要であったと思います。

【後半での修正】

後半(50分あたり)から守備面で修正が見られました。まず敵ボランチに対してはスミスロウとボランチの1人(基本的にジャカ)が前に出ることでパスの供給源を塞ぎに行っていました。またマウントに対してもCBかロコンガが対応していくようになり、改善が見られました。最前線ではマルティネッリが敵CBだけでなく、敵GKにバックパスした際にはコースを切りながらプレスをかけに行くようになり、前掛かりに取りに行く姿勢が現れていました。

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後半の修正によって守備面では前半よりもうまくハマるようになりましたが、ルカクポストプレーを中心にチェルシーの攻撃を抑え切るには危うさのある守備を続けていました。

特にボランチのジャカが前に出ることで空いてくるスペースへSTのハヴァーツが降りてボールを受けにくるようになっていました。ハヴァーツに釣られてロコンガが動けばマウントが空くのでチェルシーが優位に試合を進める展開は変わりませんでした。

他にも敵WBのジェームズが降りてくることでSBを誘い出し、その空いたスペースにロングボールを送ってルカクが収めるというパターンもあり、多様な手で攻撃してくるチェルシーへの対応に終始苦しめられました。

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また攻撃面でもまだまだ改善の必要性を感じさせるものでした。

【攻撃の連動性とサポート】

チェルシーアーセナルの2チームに決定的な差があるのは攻撃時の連動性です。どのようにして攻撃を完結させるのか、どのように攻撃へ繋げていくのかがチェルシーには存在し、アーセナルにはあやふやにしか存在しませんでした。(前節もそうですし、昨シーズンにもそういったあやふやさはありました)

例えばぺぺがボールを奪って、ドリブルを仕掛けようとしている時に彼の近くにサポートする選手がおらず、そのまま仕掛けてクロスをあげるかカットインでシュートを狙うかを狭られる場面が2度ほどありました。こういうときにスミスロウがぺぺの近くでサポートにいて、更にボランチやSBなどがすぐ後ろにいればぺぺとしては仕掛けるだけでなく、スミスロウを使ってワンツーや一旦ボランチに下げて素早く逆サイドに振ってもらうといった複数の選択肢を作ることができます。その複数の選択肢を用意することで敵の読みを欺き、敵の作られた守備ブロックを崩す一手が撃てるのだと思います。今のアーセナルにはそれがなく、いつも限られた1択か2択の少ない選択肢で勝負し、可能性の高いと言えないプレーを選択してしまっているのがチームに足りないものであると思います。

【3バックという選択】

個人的に前節の試合とこの試合どちらにも思うのが3バックという選択はなかったのか?ということです。

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なぜ3バックなのかと言えば、新加入ホワイトの存在だけでなく、ビルドアップの安定性や守備時の枚数の多さ、ティアニーの積極的な攻撃参加を増やすためです。ビルドアップでは直接的原因で失点したものはありませんが、相手のプレスに対して選択肢を狭められてロングボールを蹴ってしまう場面やスミスロウが下がってサポートする場面が目立っています。前線に空中戦に強い選手は居ませんし、裏のスペースを狙うにしても敵CBが警戒している状態でのボールは先にスタートしている守備側に優位なのでなかなか有効打にはなりにくいです。そしてスミスロウが下がってサポートする現象についてはサポートそのものは良いですが、結果的にスミスロウが下がってしまった分、前進できた時にSHが孤立しやすく(【攻撃の連動性】でぺぺを例に出した状況のように)サポート役であるはずの彼との距離が離れてしまっています。そのためにも3バックにしてCB3人からのパスコースをそれぞれ増やすことで、敵のプレスにも安定してパスを回して敵を自陣深くまで誘いこんで裏を狙ったり、押し込んだ状況では左右に揺さぶるパスを通せたりとメリットが多いと思います。

守備面でも4バックであればCBの2人はバランスやDFラインを考慮して迂闊に前に出てプレスしにいくいのはリスクを伴いますが、3バックであれば1人が前に出てプレスしにいっても残りの2人でカバーができるのでリスクを減らせます。マリの対人の不安定さや空中戦の不安も人数を増やすことで解消できますし、連続で2失点している状況を踏まえれば守備にテコ入れが必要なのは明白でしょう。ついでにチェルシー戦ではスミスロウを2人の敵ボランチを見させてスライドする動きを何度もさせたりすることで体力を消耗していたので攻撃面で体力を使ってもらうためにも2人のSTを用意してきっちり敵ボランチ2人をハメこめるようにできるのも3-4-2-1のメリットです。

そして欠かせない存在としてアーセナルを支えているティアニーですが、彼の特徴といえば攻撃参加時のクロス精度やミドルシュートです。その彼が攻守に渡って激しい上下運動を繰り返し、特に守備面でかなり体力を消耗させられていることを考えると、最初から高い位置に上がることもできるWBの方が彼の特徴が活かせます。

このように3バックをするべきメリットが今の状況を考えても多いと思います。アーセナルというチームの現状を考えるとアルテタ監督は試合の采配だけでなく様々な部分で手をかけなくてはいけないと思います。またそれをサポートしてくれる人も足りていなかったり、アルテタ監督と良い意味で意見を出し合って考えを練り直したり決断を下せる人が必要であると思います。昨シーズンのチェルシー戦でスミスロウを起用して復調したように、このチェルシー戦を踏まえてどうすべきか考えて次のシティ戦に臨んでもらいたいと思います。

PL1節 チェルシーvsクリスタルパレス

21-22シーズン プレミアリーグ第1節

チェルシーvsクリスタルパレスのレビューを書いていきます。

 

CL王者チェルシーUEFAスーパーカップを優勝し、新シーズンから1つのタイトルを獲得しました。開幕戦はホームにヴィエラ監督が就任したクリスタルパレスを迎えての試合になりました。EUROでの疲労を踏まえながら、このようなメンバーになりました。

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昨シーズンからシステムを変えて挑むのか個人的に気になっていましたが、開幕戦は以前からの3-4-3でした。

アウェーチームの新監督の手腕にも注目しながら見ていきました。

【パレスの4-4-2の守備】

いきなりビッグチームと対戦となったパレスは4-4-2の守備ブロックを作ってきましたが、前半最初から守備に追われる時間が長く続きます。

その要因は複数ありますが、その中でも気になるのがマークとプレスの曖昧さです。敵ビルドアップ時に2トップは敵CBに距離を縮めてプレスをかけにいくものの、敵2ボランチへのコースが切れていないので、そのままパスを通されてしまいます。2ボランチマンマークすれば解決できるものの、そういうこともなく、敵ボランチにパスが通った時にやっとプレスをかけにいきます。しかしながらチェルシーボランチはプレスが来る前にパスを出すので結局2度追いになってしまいます。

敵WBに対しての守備も曖昧で、SHとSBで挟み込んだりすることもなく、深い位置までもっていかれた時にSBが対応しにいくだけに留まりました。

【パレスのシステム変更】

57分にアンデルセンを入れて5-3-2に変えてきますが、結局2トップのプレスと中盤の対応に連動がないので状況は変わりません。むしろ中盤が3人になったことで2ndラインの守備が苦しくなっていきます。チェルシージョルジーニョを中心に左右へ素早いパスを通して守備陣を揺さぶるので、中盤3人のスライドが間に合わなくなっていました。

攻撃面では1度ザハが裏へ抜け出して決定機を作りましたが、シュートまでもっていけずに終わってしまいました。ボールを奪ってもCFを狙った直線的なパスが多く、プレッシングの強いチェルシーDF相手にボールを収めきれないことが多発していたのも目立ちました。ヴィエラ監督は攻撃に力を入れたようですが、正直実現性や再現性を考えると良いとは思えない攻撃が多いように感じました。

もっとクリスタルパレスの攻撃陣を活かしてチェルシー相手に一指しでも入れたいなら、ザハにマルコスアロンソの裏のスペースをひたすら狙わせたり、CFにベンテケを投入後はロングボールで彼に空中で競らせて落としを貰える位置に中盤が近づいてそこからアイェウとザハが裏のスペースを狙うような形を用意するべきだったと思います。そういったことを踏まえるとヴィエラ監督のクリスタルパレスは非常に不安の見える試合であったと思います。今後2節3節で変化が見られると良いですが、ない場合は苦しいシーズンになるかもしれません。

 

【CL王者は盤石なスタート】

この試合ホームで4-0という最高の開幕戦を迎えられたチェルシーは正にCL王者に相応しい盤石と言える試合内容でした。

昨シーズンとメンバーだけを見ればCBにチャロバーが入ったくらいで変化はあまりない形ですが、より選手たちのポジションの入れ替わりや動きの幅が多くなり、戦術が浸透しているのが実感できるものでした。

例えばサイドからの崩しではボランチから大外に開いたWBに渡し、WBがマウントとST(主にヴェルナー)とワンツーや内側と外側を使う関係性を入れ替えたりすることで敵DFを惑わしてそのまま中央へドリブルで抉りにいったり、マイナスのクロスをあげたりするのは以前よりも頻繁に見られるようになりました。STとCFの役割も今回のヴェルナーとプリシッチではヴェルナーが主にサイドへ動いてDFを引っ張ったり、裏を狙ってDFラインを崩させたりして空いた中央のスペースをプリシッチがストライカーのようにタイミングよく入り込んでゴールを決めるというような本来のポジションに囚われない複合的な動きを見せていました。おそらくこの動きのバリエーションはクリスタルパレス相手に限らずCLで対戦するようなレベルの高いチーム相手にも通用すると思います。3点目のチャロバーのゴールも素晴らしいもので、相手がシステム変更で中盤を3人にしたことでスライドが間に合わなくなっているのを利用して、ノーマークでボールを持ち運べたCBチャロバーの機転の良さと豪快なシュートを決められるという技術を見せつけるものになりました。後ろを固めすぎて、DFをフリーにさせるとあのようなシュートを決められる選手がいるという脅威は相手にとって引いて守るだけでは勝てないという難しい選択を迫らせる意味も示せたと思います。

 

以上でこのレビューを終わりにします。

素晴らしいスタートを切ったチェルシーが今後もどのような試合を見せるのか、そして新加入ルカクの活躍はどうなるのか目が離せないですね。(次節アーセナルと対戦という恐怖と変な期待が入り混じっていますw)

 

CL決勝 チェルシーvsマンチェスターシティ

20-21シーズン欧州CL決勝

チェルシーvsマンチェスターシティの感想を書いていきます。

大型補強で移籍市場を賑わしたが思ったよりも成績があがらずランパード監督を解任し、途中就任したトゥヘル監督になってからは破竹の勢いでリーグ戦とCLを勝ち進んだロンドンの青いチーム。リーグ戦終盤の敗戦とFA杯を落としたことは懸念材料であるが、見事にチームを立て直して決勝まで導いた手腕は素晴らしいの一言です。

 

悲願のCL優勝に向けてついに目の前まで勝ち抜いたリーグ王者は最後の大一番となりました。リーグでは圧倒的な強さを見せ、ダントツでリーグ優勝しました。シティほどCL優勝に相応しい強さを持ちながらも優勝を手にできていないチームは他にいないでしょう。

 

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この大一番でのスタメンはこのようになりました。チェルシーはトゥヘル監督になってからは定番となった3-4-2-1のシステムとなり、STにはマウントとハヴァーツが起用されました。直近のシティとの対決ではツィエシュを起用してゴールを決めていたのですが、今回はそのツィエシュではなくハヴァーツにしたのは一つの注目ポイントです。

シティは右SBにはウォーカーを起用してヴェルナーへの対策をしつつ、アンカーにロドリやフェルナンジーニョではなくギュンドアンを起用してきました。右SHには重要な試合で右サイド起用が多かったフォーデンではなくスターリングにし、デブライネ0トップというシステムになりました。

 

【シティの狙い】

マンチェスターシティの今回の狙いは中盤で数的優位を作ってボールを支配して崩すことでした。ビルドアップではよく見られるディアス、ストーンズ、ウォーカーの3人で最終ラインを作って組み立てていきます。中盤はアンカーのギュンドアンと偽SBとしてボランチの位置に動く左SBジンチェンコ、IHのフォーデンとベルナルド、0トップとして中盤に降りてくるデブライネの5人で5角形を作ったり、ジンチェンコを抜いてダイヤモンド型を作っていました。敵の中盤は2ボランチの2人のみなので数的優位が作れますし、STが降りてきても数的優位を維持できます。これによって中盤でボールを支配し、ゲームをコントロールしようと狙っていたのではないかと思います。またボール支配によって相手のラインを下げさせて押し込むことで、より攻撃的に振る舞い、ギュンドアンもゴール前に出てフィニッシュに関われると考えてアンカーで起用したのではないかと思います。

【前線からの激しいプレス】

シティは普段の4-4-2の守備ではなく、4-3-3で前線から激しいプレスをかけていきます。前線の3人(スターリング、デブライネ、マフレズ)で敵CB3人に対してプレスし、敵2ボランチには2IHがついていきます。敵WBに対してはSBがついていき、ボールサイドとは逆のSBは1列降りて3バックの状態にして敵STとCFに対応します。アンカーのギュンドアンは特定のマークにつかない分、中盤で数的優位を作ってボールを奪いやすくしています。

このプレスによってシティはチェルシーのビルドアップを阻害し、前線へのボールの進行を結構防げていました。

スターリングの起用】

この試合シティは左SHにスターリングを起用しました。準決勝ではフォーデンがずっと出ていましたし、今シーズンのパフォーマンスを見てもフォーデンが優先順位が高いでしょう。しかしこの大事な試合でスターリングを起用した意図は裏へ抜けるスピードを期待したからだと思います。

シティの狙いであった中盤での数的優位を作ろうとした時にチェルシーは解決策としてボールサイドにいる左右のCBが1列前に出てシティのIHに対応していました。この状況の時シティから見ると敵最終ラインの2CBのどちらかが、1人欠けてスペースができている状態なので裏を狙うなら絶好の場面です。そこで重要になるのがスターリングです。中盤で数的優位を作りながら敵CBが前に出れば、その裏をついてスターリングが飛び出していくという狙いをもっていたのではないかと思います。

また左IHにフォーデンがいて中央にはデブライネがいるので、スターリングと三角形を作ってテクニックの高い選手3人で連携した崩しができることも狙いとしてあったと思います。

チェルシーの守備】

チェルシーの守備はシティほどハイプレスではなくゾーンで守備するような形でした。ハヴァーツ、ヴェルナー、マウントで中央へのパスコースを切りながら敵CBに詰め寄ることで牽制していきます。2ボランチのカンテとジョルジーニョは敵IHにマークし、WBはCBと同列に並んで5バックを作りながら敵SHへパスが来る時にはプレスします。敵SHへのパスには執拗にプレスをしていたので前を向いてドリブルをさせない守備ができていました。またジンチェンコの偽SBの動きにはカンテが付いていき、代わりに敵IHにはCBがついていくことでフリーでボールを受けられる選手を作りませんでした。これによって中央のパスコースを塞ぎながら最終ラインには5バックがいる状態を作れるので、強固な守備網になっていました。シティもなかなか中央でパスを通せず、サイドから崩そうとサイドチェンジを使いながら試行していましたが中々崩せずに攻撃が停滞していました。

また1stラインから最終ラインまでの縦の距離を狭めることで中盤のスペースを狭くさせてシティの狙い通りのパス回しをさせないようにしていました。そのため最終ラインが高い位置を取ることがあり、裏を狙われるリスクはあるもののスターリングとの1vs1でジェームズが勝てていたことやラインの統率がとれていたことで大きなリスクになる場面は少なかったです。

【ハヴァーツの起用】

この試合でSTにはハヴァーツが起用されました。直近の対決ではツィエシュが起用されてゴールも奪っていましたが、ベンチに座らせたまま試合終了しました。

ドイツ人MFを起用した理由として大きく2つの要因があると思います。1つめに守備時の切り替えの早さや守備強度の高さが挙げられます。彼の守備能力は高く、周りと連携しながら積極的に走って守備に奮闘します。ツィエシュに比べて守備への貢献を期待して決勝の舞台に立たせたのでは無いかと思います。2つめに挙げられるのは裏への動き出しです。ゴールシーンを見ればわかるように裏への動き出しがうまく、スピードとフィジカルも高いので、カウンター時のフィニッシュに期待ができます。トゥヘル監督がシティのハイプレスで3バックが組み立てに苦戦しているにも関わらずそのままプレーさせたのは、正に狙いとしてハヴァーツの抜け出しを考えていたからだと思います。過去の試合でヴェルナーが中央からサイドへ抜け出す動きが効いており、そこからのクロスでチャンスが作れていたのを踏まえて、ヴェルナーの動きに合わせて彼のいたスペースにハヴァーツも動くことでシティのDFを崩そうと考えたのではないでしょうか。そしてシティの守備構造上ボールサイドの敵WBに対してSBが対応しにいくので、素早く逆サイドにボールを動かせればSBが最終ラインに戻って逆側のSBがWBに対応しにいかなければいけません。このSBが動くDFラインのスライドする時間にフリーとなったSTにパスが通れば大きなチャンスになることをチームの攻撃として設計していたと思います。

得点シーンより数分前の39分に似たような場面が見られます。この時はGKから左WBにパスが渡り、STマウントが少し下がってボールを受けてから逆サイドでフリーになっているジェームズへパスを通していました。この時は敵左SBジンチェンコがスライドに間に合ってハヴァーツにマーク付いていたのでマウントはジェームズへパスしたのだと思います。この場面から見てもわかるようにシティの守備の仕方を見て、崩しの形をイメージできていたのだと思います(トゥヘル監督が飲水タイム時にGKを介して裏を狙うように指示をしていたのかもしれないです)。

 

シティの失点シーンをよく見ると敵がGKに戻した際にハイプレスをかけようとFWとMFが前へプレスしにいこうとしています。ここでIHが前に出たことでCBとの間に大きくスペースが生まれてしまいました。次の瞬間には敵WBチルウェルがフリーでGKからパスを受けてしまったので、慌ててウォーカーがプレスしにいき、ストーンズが右にスライドしてスペースを埋めにいきます。ここでジンチェンコも急いで最終ラインに戻りにいきますが、ジンチェンコとディアスの間は縮まりきっておらず、走り出しているハヴァーツへのコースが空いている絶妙なタイミングでパスが通されてしまいました。この一連の流れはシティのDFと前線で行動選択にズレが生まれたことが要因になったものだと思います。前線のプレスをかける時にDFも連動してウォーカーがチルウェルにプレスしていればパスが通されずに済んだでしょう。本当に少しのズレですが、これが命取りになるくらい彼らの能力は互角であったと思います。

【カンテという唯一無二のボランチ

勝敗を分ける要因の一つといっても過言ではないのがカンテの存在だと思います。このフランス人MFは基本的には前線に連動して前に出て敵IHをマークしたりジンチェンコをマークしていました。彼の高いカバー範囲とボール奪取力によって敵のキーマンであるデブライネを苦しませ、攻撃を摘み取っていました。デブライネの方がカンテから離れて右サイドでプレーせざるを得なくさせる程の素晴らしいパフォーマンスを見せていた彼は優勝へ大きく貢献したといえます。

 

【シティの課題と修正案】

最後にシティの課題とどのようにすれば今回のような状況を防げる可能性があったのか、修正案を出していきます。

彼らの攻撃がゴールに至れなかった理由の一つとしてサイドでの連携が悪かったことがあります。左サイドではスターリング、デブライネ、フォーデンというチームでも屈指のテクニシャンが揃っているにも関わらず、あまり連携したプレーが見られず、ボールは回しているが崩しにいけない場面が見受けられました。スターリングの今シーズン見られるコンディションの悪さによるものなのか、この3人で三角形を作る場面が過去の試合を見るに少ないからなのか、詳細は定かではありませんが連携がうまくいっていないのは痛手でした。スターリングはジェームズに対して1vs1で勝てず、得意のドリブルが封じられてしまったのも難しくさせました。左サイドではマフレズが前を向いてをボールを持った時はチルウェルに対して優位にプレーできていましたが、ほとんどは激しいマークによって前を向いてドリブルをさせてもらえずに苦戦していました。後半にはウォーカーが大外を上がるようになってマフレズ内側ウォーカー外側でプレーするようになりましたが、マフレズがハーフスペースでボールをもらいに行く動きが少ないことやウォーカーも外側上がってクロス以外の選択肢が無いことで単調な攻撃に終わりました。デブライネが右サイドでもっとプレーしていれば必殺の高精度な高速クロスが何本か通せたかもしれませんし、マフレズと連携して崩しにいけたかもしれません。

今回アンカーで起用されたのがギュンドアンということに驚いた人は少なくないでしょう。(決して彼のアンカーでのプレーが悪かったからという理由ではないです)彼がアンカーで起用されるのは久しぶりですし、コンディション不良や怪我などがなければ最優先はフェルナンジーニョかロドリであるからです。しかしギュンドアンを優先させたことについては先述したように数的優位を作って押し込んだ後のことを考えてのものだとしたら多少納得いくと思います。とは言え私としてもギュンドアンをアンカーで置くのは今シーズンのパフォーマンスを見てもナンセンスです。むしろ得点を取ってリーグ優勝に貢献した彼を活かすためにも普段通りのIHが一番良いと思います。アンカーにはキャプテンであり、守備の判断力が高いフェルナンジーニョを起用した方が攻守において安定し、失点シーンでもウォーカーにコーチングするか役割を捨ててハヴァーツへマークしにいったのではないかと妄想しています。

改善策としてはスタメン自体はグアルディオラ監督の判断を尊重し、実際に試合が始まらないとわからない部分も多かったのでそのままで良かったとします。しかし交代策としてデブライネが負傷時にジェズスではなく、フェルナンジーニョの方が良かったのではないかと思います。フェルナンジーニョをアンカーにし、IHを左ギュンドアンと右フォーデンにして0トップにベルナルドにすれば、0トップを維持しながら右サイドではマフレズ外側に対してフォーデンが内側でニアゾーンへ走るという形ができます。ベルナルドの攻守における運動量と能力の高さをもっと信用して使ってほしいと思います。2人目の交代にはなかなか突破が出来ずに持ち味が発揮されていないスターリングを下げてジェズスを投入し、彼のスピードと裏への動きやストライカーとしての役割を任せます。0トップの位置にいるベルナルドと動き合ってスペースを使い合うこともできるでしょうし、マークもしづらくなるでしょう。3人目の交代枠はベルナルドを下げて最後フィニッシュの精度に賭けてアグエロを投入するか、マフレズ下げてベルナルドを右SHにしてアグエロをCFに置くのが私なりの考えです。

 

以上だらだらと書き連ねましたが、今回の試合はチェルシーの選手とトゥヘル監督の采配が見事で素晴らしかったのが勝因だと思います。してにとっては初の決勝で様々なプレッシャーや思いがあった中で難しい結果になりましたが、彼らの実力が高いのは事実でありリーグ優勝は当然と言えるパフォーマンスは見せていたので来シーズンも見逃せない試合を見せてくれるでしょう。

 

EL決勝T準決勝2ndレグ アーセナルvsビジャレアル

20-21 EL決勝T準決勝2ndレグの

アーセナルvsビジャレアルの試合レビューを書いていきます。

1stレグではビジャレアルホームで1-2の敗戦をしたアーセナルはホームで負けられない1戦になりました。今期はリーグ戦で10位前後と調子は振るわず、昨年優勝したFA杯も敗退した中でEL優勝のみが唯一残されたタイトルであり、来期ヨーロッパの大会への出場権を得るためにも重要な試合でした。

しかし結果は0-0の引き分けで合計スコア1-2でビジャレアルの勝利になりました。

では何が原因でアーセナルは勝てなかったのか、アルテタ監督はどのようなプランで試合に望んだのかを書いていきます。

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スタメンはジャカが最初は出場予定でしたが、直前の怪我によってティアニーが急遽出場することになりました。システムが4-3-3で今までアルテタ監督体制になっては初めて?のシステムでした。トーマスをアンカーに置き、スミスロウとウーデゴーをIHにするという思いきった中盤で、かなり攻撃的な選択だと思いました。

 

【中央へ誘導するプレス】

プレスの仕方がオーバメヤンが敵CBへ左よりからプレスし、WGが敵SBへのコースを切りながらプレスすることで敵のパスコースを中央へ誘導していました。そして中央の敵CHとSHにはそれぞれIHとSBがマークすることで中央でボールを奪うのが狙いでした。

しかしビジャレアルはGKを使って選手間の距離を広げながら、CF(主にG.モレノ)がタイミングよく降りてボールを受けてSBに繋げたり、SHのトリゲロスがボールを受ける(この時に左SBペドラサが高い位置を取ることでベジェリンのところで1vs2を作っている)ことでプレスを回避されてしまいました。特にアンカーであるトーマスの両端にあるスペースを使われてプレスを回避されていました。これによってリトリートして守備しなくてはいけなくなりました。

 

【4-4-2の硬い守備】

ビジャレアルの守備は2トップがコースを限定させて中央を通させないようにして守ります。この時2トップのどちらか1人はトーマスへのコースを切ることでパスコースをサイドへ誘導させています。更に敵SHと敵SBもボールがSBやSHに入るタイミングでプレスをすることで前を向かせてもらえません。敵CHも1人はトーマスの近くで監視し、もう1人がスミスロウかウーデゴーをマークしてくるので前を向いてプレーをなかなかさせてもらえませんでした。

 

【停滞した右サイド】

SBベジェリンとWGサカの右サイドは攻撃が停滞していました。もともとこのサイドからの攻撃はサカの個人技頼りなことが多く、彼が1人で打開して得点に繋げる場面が今期はほとんどでした。その中でベジェリンは攻撃時にインナーラップをして、サカがドリブルで打開できない時にサポートしたり敵DFを引っ張る役割を普段からしていました。この試合でもベジェリンは同様な動きをしていましたが、ビジャレアルの中央へ圧縮された守備にはあまり効果を発揮できず、攻撃の停滞に繋がってしまいました。また左IHのウーデゴーが右IHのスミスロウに比べてニアゾーンへ飛び出す動きやサイドでサポートする動きが少なかったのも原因にありました。こういった時にクロスの精度にベジェリンより期待できることでサイドの内側外側を使い分けた攻撃ができるチャンバースを起用した方が良かったのではないかと思いました。

【疑問を抱かせる采配】

正直今回アルテタ監督が用意した策は失策だったのではないかと思いました。

・トーマスのアンカー起用

トーマスをアンカーで起用したのはリスクの方が大きく、本人もプレーしづらかったのではないでしょうか。彼が前に出すぎたことで相手に奪われた後のフィルター役が居らず、危ない場面もありました。彼の特徴である守備の強度やドリブルでの持ち上がりなど自分で動き回りながらを相手と近い距離でのプレーが得意な選手はアンカーというよりも、その1列前(IH)やダブルボランチでの起用の方がうまくいくと思います。

・なぜ4-3-3?

そう考えるとアンカーに適正な選手がいないアーセナルで4-3-3をしようとすること自体に疑問をもちました。エメリ監督のことを考えると、守備に比重をかけて引いて守ってくる可能性が高いと予想し攻撃的なシステムをしたのかもしれません。確かに引いた相手を崩しにいくならスミスロウ、ウーデゴー、サカ、ぺぺ、オーバメヤンを同時起用して最初から挑めば試合を優位に進められたでしょう。しかし予想通りにいかなかった時や普段と違うシステムであることによる慣れのなさを考えると、最初は4-2-3-1でバランスを取りながら試合展開を見ながら手を加えて行った方が良かったのではないと思いました。

・中央へ誘導する守備

CLで上位に上がったチームやプレミアリーグ全体をみても中央へ誘導する守備をするチームは少なく、多くのチームは中央を固めてサイドへ誘導する守備をしています。それなのにあえて中央へ誘導するようにした理由が私にはよくわかりませんでした。トーマスの球際の強さを買ったからなのか、中央で奪った方がゴールへ直結しやすいからなのか理由は定かではありませんが、中央へ誘導する守備は逆効果になっていたことは否めません。

・ラカゼットとオーバメヤン

ラカゼットは怪我明けでオーバメヤンマラリアの影響で本調子ではない状況ではありましたが、アーセナルのエースであるこの2人が同時に出場している時間はありませんでした。試合展開的にはビルドアップの貢献とかを考えるとラカゼットは早い時間からほしかったです。コンディションを考えて途中出場させるしかなかったのだと思いますが、そこで交代させたのがオーバメヤンだったのは疑問に感じています。オーバメヤンも色々とコンディションが優れてなさそうでしたが、ニューカッスル戦でのゴールやポストに2度当てた場面があったようにゴールへの嗅覚は抜群に高い選手なので、もう少し長く見たかったです。更に言えばラカゼットとオーバメヤンが同時に出場している時間を10分でもいいので用意してほしかったです。ラカゼットとオーバメヤンの連携や彼らにしかできないプレーで大一番を飾って欲しかったです。

 

・最後に

だらだらと試合をみてのレビューを書き連ねましたが、アーセナルに対して批判的な見方やアルテタ監督に対して不満を募らせているわけではありません。

確かに来期はCL、ELともに出場せずリーグとカップ戦で戦っていくことになりますが、悲観せずにどのような展開になるか楽しみにしながらアーセナルの試合を今後も見ていきたいと思っています。

 

CL決勝T2回戦1stレグ レアルマドリーvsリヴァプール

CL決勝T2回戦1stレグ

レアルマドリーvsリヴァプールの試合についてレビューを書いていきます。

 

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怪我によって守備の要であるラモスの不在、新型コロナ感染によるヴァランの離脱という主力CBが2人ともいなくなってしまったレアルマドリーミリトンとナチョという珍しい組み合わせでCBを任されました。怪我で離脱中のアザールのところにはヴィニシウスが起用されました。

アウェーのリヴァプールはCBにはフィリップスとカバクが起用され、中盤にはケイタがサプライズ起用されました。CFにはフィルミーノではなく最近好調であるジョッタが任されました。

 

どちらも主力CBの離脱によって守備に不安を抱えている中で、如何にして守備への負担を減らすために攻撃を完結させられるのか問われた試合内容であったと思います。

 

リヴァプールは試合序盤からお得意の前線からのプレスを仕掛けていきます。

しかしレアルマドリーはこのプレスに対して対策を用意してありました。

レアルマドリーのビルドアップ】

いつも通りWGの2人がSBへのコースを切りながらプレスするリヴァプールに対して、レアルマドリーは急がずにGKに戻すことで数的優位にしていました。そのままWGがGKまでプレスしてくれば、ロングボールを前線に向けて出したりモドリッチとクロースの2人にパスを出すことで解決させていました。更にSBが高めの位置を取り、CBと距離を取ることでCB→SBへのコースを切りづらくすることでリヴァプールのSBがレアルマドリーのWGとSBの両方をマークしないといけないという状況を作り出していました。これによって前傾姿勢になったリヴァプールに更なる一手をレアルマドリーは打ってきました。

【クロースの正確な一指し】

GKを使って低い位置から組み立てることでリヴァプールの選手たちを引き寄せたところで、クロースが一気に正確なボールを左WGのヴィニシウスに送ります。SBが高い位置にいることで相手右SBのAアーノルドにメンディーへ注意を向けさせていたこともあり、ヴィニシウスが裏へ抜けだしてそのままゴールネットを揺らしました。更に2点目もヴィニシウスを狙ったクロースの一指しが絡んだものでした。どちらもクロースのマシンのような正確なパスだからこそ生まれたゴールだと思います。またベンゼマが降りてボールを受けようとする動きによってCBの注意を向けさせていたというのも効いていました。

【サイドへ誘導する守備】

レアルマドリーはCBへの不安を抱えていることもあり、ボール非保持の時は中央を塞いでサイドへボールを誘導する守備をしていました。相手CBに対してベンゼマとIHが相手アンカーとIHへのコースを切りながら詰めていくことでコースを限定させていました。もう1人のIHも相手IHをマークすることで中央へのパスコースを失った相手CBはサイドへボールを出さざるを得なくなります。これによってサイドへボールを誘導し、CBへの負担を減らせるようにしていました。中央を突破されそうになってもカゼミーロが素早く対処にいくことで未然に防げていたのもあり、リヴァプールの強力な前線を苦しめることに成功していました。CBの裏へ抜けようとする相手への意識と準備もしっかりされていたので、リヴァプールのカウンターを許さなかったのも良かったと思います。

【後手に回ったリヴァプール

今回クロップ監督の策は早々に崩れました。スタメンにサプライズで起用したケイタを前半40分過ぎに交代させてチアゴを投入しました。

ケイタをスタメン起用した意図はおそらくレアルマドリーマンマークで3トップが抑えられた時に攻撃の選択肢としてケイタのドリブルが活きてくると考えたからではないかと思います。ケイタのドリブルでカゼミーロを引っ張り出せれば後ろのスペースを使って得点の可能性は高くなるだろうし、フィルミーノではなくジョッタをCFとして出したのも攻撃の狙いとしてカウンタープレスをハメきって個の質が高い3トップで得点を奪おうという狙いがあったからだと思います。

しかしレアルマドリーのビルドアップが安定してプレスをかわしていたことや攻撃が単調気味でうまくいっていなかったことなどを踏まえて、ポゼッション時の攻撃で的確なラストパスを出せてゲームをコントロールできるチアゴに代えました。前半の段階で交代を決断したのはクロップ監督としても采配ミスを認めた上で2失点をいち早く取り返すために早く手を打ちたかったからでしょう。

アゴが入ってからはリヴァプールのパスの通りも良くなり、攻撃も以前よりボールを保持しながらでも崩しにいけるようになりました。後半早い時間帯には相手の処理の甘さもあり、サラーがゴールを決めて一時は1点差にできましたが、その後はゴールを奪えずに終わりました。チアゴの投入自体は良かったと思いますが、既に2失点した後であったことが響きました。

またファビーニョの活躍も普段と違い、2ndボールを拾えず、リヴァプールの2次攻撃3次攻撃というように怒涛の攻めができませんでした。レアルマドリーはあまり中央でボールを繋がずにサイドから攻撃をし、ファビーニョがボールを奪いにいく時間を与えずにプレーしていました。これによって守備のフィルター役でもあったファビーニョを飛ばして攻撃を仕掛けさせてしまったのはリヴァプールにとって痛手であったと思います。

 

18-19CL王者と17-18CL王者というビッグチーム同士の対決は17-18CL決勝同様にレアルマドリーの勝利で終わりました。ヴィニシウスのスピードは脅威であり、リヴァプールにとって守備が不安なAアーノルドのサイドを突破されてしまったのが大きな勝因になりました。CBではどちらも主力ではないメンバーでしたが、レアルマドリーの方が強度の高い守備を見せていましたし、チームとしても上手く守備ができていたと思います。リヴァプールとしてはスタメンにケイタを起用したのが裏目に出てしまったことや好調のジョッタが振るわなかったこともあり、難しいゲームになったと思います。